ノロウイルスは突然の激しい嘔吐や下痢などの症状を引き起こす感染力の強いウイルスです。わずかなウイルスでも感染が広がるため、家庭や学校などで集団感染が起こることもあります。
この記事ではノロウイルスの感染時期や感染経路、感染対策と治療法を解説します。正しい知識を持つことで、感染予防につながります。

監修医師:
居倉 宏樹(医師)
は呼吸器内科、アレルギー、感染症、一般内科。日本呼吸器学会 呼吸器専門医、日本内科学会認定内科医、日本内科学会 総合内科専門医・指導医、肺がんCT検診認定医師。
ノロウイルスとは?ノロウイルスの特徴と感染した際の症状

ノロウイルスとはどのようなウイルスですか?
ノロウイルスは人の腸管で増殖し、嘔吐や下痢などを引き起こすウイルスです。1968年にアメリカの小学校でウイルスが原因と推察される集団下痢症が発生しました。当時はその形態が明らかになっておらず、1972年に非細菌性急性胃腸炎を起こす小型球形ウイルスと判明しました。2002年に国際ウイルス分類委員会で現在のノロウイルスという名称が正式に付けられました。
このウイルスは感染力がとても強く、10〜100固程度の少量でも発症することがあります。乾燥や低温に強いため、冬場に流行しやすいのも特徴です。
ノロウイルスに感染すると一度は体内で免疫が作られますがいずれ失われます。免疫の持続期間は6ヶ月〜2年程度と考えられていますが、解明されていない点も多くあります。さらに、ノロウイルスには現在確認されているだけでも30種以上の型が存在します。年によって流行する型が異なるため、過去に感染したことがあっても再度感染する可能性があります。
参照:
『Norovirus』(Clinical Microbiology Reviews)
『Norovirus and Foodborne Disease: A Review』(Food safety)
『ノロウイルスの流行と集団免疫』(国立健康危機管理研究機構)
『ノロウイルスとは』(国立医薬品食品衛生研究所)
ノロウイルスに感染した際の症状を教えてください
ノロウイルスは感染後、通常24〜48時間の潜伏期間を経て発症します。主な症状は吐き気や嘔吐、下痢、腹痛です。ノロウイルスによる嘔吐は二日酔いや車酔いによる嘔吐とは異なり、突然強く襲ってくるのが特徴です。
発熱は軽度にとどまり、数日以内に治ります。健康な方であれば症状から2日程度で自然に治癒し、後遺症もほとんどないといわれています。
ただし、乳幼児や高齢の方、基礎疾患のある方では症状が長引き、重症化したり脱水症状を起こしたりするケースもあります。また、嘔吐物による窒息や誤嚥性肺炎による重症化や死亡に至る例もまれにあります。
参照:
『【管内情報】 【保健所健康危機管理事例】感染性胃腸炎集団発生事例報告(高知県)』(国立保健医療科学院)
『ノロウイルスの流行と遺伝子型』(日本食品微生物学会)
ノロウイルスの感染しやすさと感染経路

ノロウイルスは人から人に感染しますか?
ノロウイルスは人から人へ感染します。感染者の嘔吐物や便に含まれるウイルスが体内に入ることで感染します。
感染者の嘔吐物や便には多量のウイルスが含まれています。ノロウイルスは少量でも感染するほど感染力が高いのが特徴です。そのため家庭内や保育施設、学校、介護施設、飲食店など人が集まる場所では毎年集団感染が発生しています。
また、感染しても症状が出ない不顕性感染のケースもあります。症状が現れていなくても便からウイルスが排出されるため、本人が気付かないうちに周囲へ感染を広げてしまうおそれがあります。
ノロウイルスの感染経路を教えてください
ノロウイルスの主な感染経路は下記のとおりです。
感染経路 感染の仕組み 感染例
食品媒介感染
(食中毒)
汚染された食品や水を摂取する
生食や加熱不十分な二枚貝を食べる
感染者が調理時に食品を汚染する
接触感染 嘔吐物や便に含まれるウイルスが手指を経由して体内に入る ドアノブや手すりなどに付着したウイルスに触れ、その手で食事をする
飛沫感染 感染者の嘔吐物や便の飛沫が体内に入る 嘔吐物を処理した際に飛沫を浴びる
粉塵感染 乾燥した嘔吐物や便が粉塵となり空気中に舞い、吸い込む 嘔吐物の処理が不十分で、乾燥後にウイルスを含むほこりを吸い込む
ノロウイルスは人から人への感染だけでなく、食品からも感染するのが特徴です。そのため、マスクや手洗い、うがいなどの基本的な感染対策をしていても感染、発症する可能性があります。
また、ノロウイルスによる感染症は、感染経路によって呼び方が異なります。人から人への感染により発症する場合は感染性胃腸炎、ウイルスに汚染された食品や水を原因として発症する場合は食中毒といいます。
ノロウイルスはどのような食べ物からうつりますか?
ノロウイルスは二枚貝からうつる場合があります。二枚貝は海水を大量に取り込み、海水中のウイルスを体内で濃縮します。こうして汚染された貝を生や加熱が不十分な状態で食べることで感染する可能性があります。
カキやシジミ、アサリ、ハマグリなどがノロウイルスに汚染されていることがありますが、生食の習慣があるカキがノロウイルスの代表例として有名です。
一方、ノロウイルスによる食中毒事例の約7割では原因となる食べ物が特定できていません。ウイルスに感染した食品取扱者が調理や配膳の際に手指を介して食品を汚染するケースが多いためです。
参照:『ノロウイルスに関するQ&A』(厚生労働省)

