筋力低下は身体機能の低下にとどまらず、心理面や社会生活にも広範な影響を及ぼします。食事や排泄といった基本的な日常生活動作が困難になるだけでなく、休職や休学を余儀なくされるなど、患者さんとご家族の生活全体に大きな変化をもたらします。ここでは、生活への影響と必要な支援について解説します。

監修医師:
田頭 秀悟(たがしゅうオンラインクリニック)
鳥取大学医学部卒業。「たがしゅうオンラインクリニック」院長 。脳神経内科(認知症、パーキンソン病、ALSなどの神経難病)領域を専門としている。また、問診によって東洋医学的な病態を推察し、患者の状態に合わせた漢方薬をオンライン診療で選択する治療法も得意としている。日本神経学会神経内科専門医、日本東洋医学会専門医。
筋肉の麻痺が生活に与える影響
身体機能の低下にとどまらず、心理面や社会生活にも広範な影響を及ぼし、患者さんとその家族の生活全体を見据えた支援が必要です。
日常生活動作の制限
筋力低下が進行すると、食事、排泄、入浴、着替えといった基本的な日常生活動作が自力では困難になります。ベッド上での体位変換や寝返りも介助が必要となり、長期臥床により褥瘡(じょくそう)や深部静脈血栓症のリスクが高まります。
嚥下障害がある場合には、経鼻胃管や胃瘻による栄養管理が必要になることもあります。呼吸筋麻痺により人工呼吸器を装着している期間は、コミュニケーションも制限され、筆談やまばたきによる意思疎通を図ることになります。
こうした状態は一時的なものであり、多くの方は回復に向かいますが、その間の心理的負担は大きく、医療スタッフや家族による精神的サポートが重要です。動けない不安、回復への焦り、先の見えない不安などを抱える方も少なくありません。
社会復帰と就労への影響
ギラン・バレー症候群の発症により、多くの方が休職や休学を余儀なくされます。治療とリハビリテーションの期間は数ヶ月から1年以上に及ぶこともあり、職場や学校への復帰時期は個人差が大きくなります。
回復後も疲れやすさ(易疲労性)が残存することがあり、フルタイムでの就労が難しい場合には、時短勤務や配置転換などの配慮が必要です。後遺症として筋力低下やしびれが残る場合には、身体障害者手帳の取得や障害年金の申請を検討することもあります。
職場や学校、行政の支援制度を活用しながら、段階的に社会復帰を目指すことが現実的です。リハビリテーション医や医療ソーシャルワーカーと連携し、復帰計画を立てることが推奨されます。焦らず、自分のペースで回復を目指すことが大切です。
まとめ
ギラン・バレー症候群は、感染後に突然発症する自己免疫性の末梢神経疾患であり、両側性の筋力低下や感覚障害を主症状とします。下肢から始まり上肢、体幹、顔面、呼吸筋へと進行する特徴的なパターンを示し、早期の診断と治療が重要です。免疫グロブリン療法や血漿交換療法により多くの方は回復に向かいますが、回復には時間を要し、後遺症が残ることもあります。男性にやや多い傾向がありますが、性別を問わず発症する可能性があります。力が入りにくい、しびれが続くといった症状に気づいたら、速やかに神経内科を受診することが推奨されます。
参考文献
ギラン・バレー症候群について(厚生労働省)
ギラン・バレー症候群診療ガイドライン(日本神経学会)
神経医療研究センター – 神経筋疾患ポータルサイト(国立精神・神経医療研究センター)
ギラン・バレー症候群治療ガイドライン(日本神経治療学会)

