小脳出血の治療法
救急対応と内科的治療
救急外来では、頭部CTやMRIで、出血がどこにあり、どのくらいの大きさかを素早く確認します。血圧が非常に高い場合は、血圧を下げる薬を点滴で使い、必要に応じて脳の腫れ(脳浮腫)を抑える薬も使用します。血液をサラサラにする薬を飲んでいた患者さんには、薬の効き目を弱める処置(拮抗薬や凝固因子製剤による逆転療法)をすぐに行います。
出血が軽度で小さい場合は、集中治療室などで血圧の管理と神経症状(めまいやふらつきなど)の観察を厳重に行います。症状が安定すれば、約1〜2週間で一般病棟に移り、約3〜4週間で退院できることもあります。
退院後も、高血圧の治療や再発を防ぐため、定期的な通院が必要です。血液をサラサラにする薬の服用を再開するかどうかは、必ず医師の指示に従ってください。
外科的治療(手術)
出血の塊(血腫)が大きい場合は、手術で血腫を取り除き、脳幹の圧迫や水頭症(すいとうしょう:脳の中に水がたまる状態)を改善させます。日本の脳卒中治療のガイドラインでは、血腫の大きさが最も長い部分で3cm以上で、神経の症状が悪化している場合や、脳幹の圧迫・水頭症を伴う場合に、開頭手術が勧められています。近年は、内視鏡を使った体への負担が少ない手術も選択肢の一つとなっています。
手術を行った場合は、数日間は集中治療室での管理が必要で、その後一般病棟に移り、約3〜4週間ほどリハビリテーションを行います。水頭症を合併している場合は、脳室ドレナージ(水を外に出す処置)やシャント手術(水の流れ道を作る手術)を追加することもあります。
退院後も、手術した傷口の経過観察や再出血を防ぐために、定期的に通院し、CT検査や血圧の管理を行います。
術後管理と予後改善
手術後は、引き続き血圧の管理と脳の腫れへの対応を続け、尿量や血液検査で体の中の水分バランスを評価します。再び出血したり、感染症を起こしたり、水を外に出す管(ドレナージ)が詰まったりするといった合併症に注意します。神経の症状が落ち着いたら、できるだけ早くリハビリを始めます。
術後の経過が順調であれば、1〜2か月で退院し、その後はリハビリの通院や自宅でのリハビリが続きます。再び出血しないための生活習慣の改善も非常に重要です。
小脳出血のリハビリ方法
急性期から回復期のリハビリ
リハビリテーションは、脳神経外科やリハビリ科で、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士がチームを組んで行います。
急性期(発症直後)は、ベッド上での寝返りや体位変換、関節を動かす運動から始め、徐々に座る練習や立ち上がる練習へと進みます。回復期(症状が安定した後)には、バランスボードや歩行器を使った歩行訓練、筋力や体力の向上のための運動を行います。
血腫の大きさや、生命維持に重要な脳幹の損傷の有無によって回復には個人差がありますが、数か月〜1年以上リハビリを続けることが多いです。早期に開始し、継続するほど、歩行や日常生活動作の回復が期待できます。
リハビリの初期はめまいやふらつきが強いため、転んでしまうのを防ぐためにスタッフが必ず側につきます。疲れやすいので無理をせず、体調に合わせて休憩を取りながら行います。
ご家族は、患者さんの気持ちを支え、焦らずリハビリに取り組めるよう励ますことが大切です。食事や入浴などの日常生活を安全に行えるよう、手すりの設置や段差の解消など、自宅の環境を整える支援もしましょう。
言語療法・作業療法
ろれつが回らない(構音障害)や食べ物・飲み込みがうまくいかない(嚥下障害)がある場合は、言語聴覚士による訓練を行い、発声練習や口の周りの筋肉のトレーニング、飲み込みの練習などを実施します。
手足の動きの連携がうまくいかない(協調運動障害)には、作業療法士が指導し、手芸やゲームなどを通じた細かい手の動作の訓練、日常生活で必要な動作の練習を行います。
発音や飲み込みの改善には数か月〜1年程度かかることが多く、退院後も外来や訪問リハビリで継続します。
食事中は、誤嚥を防ぐため、ゆっくりと食べ、姿勢や食べ物の形(刻み食など)に注意します。ご家族も飲み込みの指導を受けて見守りを行い、会話の機会を増やすなど、コミュニケーションをサポートしましょう。
在宅リハビリと社会復帰
退院後は、訪問リハビリやデイケア(通所リハビリ)でリハビリを継続します。自宅では、段差の昇り降りや椅子からの立ち上がり、庭や公園での歩行練習などを行い、体力とバランス感覚を維持します。
家庭でのリハビリは退院後も長期間にわたり、体調や生活環境に合わせて段階的に負荷を上げていきます。
自宅は病院より安全対策が少ないため、床の滑り止めや手すりの設置など、転倒予防策を徹底しましょう。仕事への復帰や運転の再開は、医師と相談し、必要に応じて職場環境の調整を行います。
励ましや適切な手助け、通院の付き添いは、患者さんのリハビリへの意欲を高めます。リハビリの進み具合を共有し、達成したことを一緒に喜ぶことで、長期的な取り組みを支えましょう。

