高架下の商店街。昼下がり、焼き魚の香りがふわりと鼻をかすめた。目をやると、暖簾がひるがえる小さな割烹居酒屋。
店名は「丹後のさと」。京都・京丹後出身のご主人が、奥さんの地元・布施で営む店だ。
ショーケースにはおばんざいがずらり。出汁の香りに誘われて、気づけば箸が進んでいる。週替わりの旬の料理、郷土の味、石焼のカレーまで——肩肘張らずに本格が味わえる場所が、ここにある。

ちいさな割烹、布施の高架下にて
布施駅を降りてすぐ、飲食店がひしめく「あじロード」の一角に、気になる暖簾が風に揺れていた。「丹後のさと」。暖簾をくぐると、まず目に飛び込んでくるのが、おばんざいのショーケースだ。

ひと皿ひと皿、丁寧に盛られた小鉢たち。決して派手じゃない。けれど、静かな自信を感じる。さばの南蛮酢漬け、がんもどき、そして奥さん一押しのマカロニサラダ。砂糖ではなく、はちみつを使ったまろやかな甘さが、じんわりと心に残った。
「選びきれないときは、おすすめしますよ」そう言って笑う奥さんの声にも、どこか安心感がある。
おばんざいという名の会話

「おばんざいって、特別な食材は使わないから、料理人の腕が出るんですよ」
そう話すのは、店主の堀さん。京都の老舗割烹「田ごと」やホテルの和食部門で10年以上腕を磨いてきた料理人だ。
出汁の取り方、下処理の丁寧さ、そして味の引き算。そのどれもが、気取らない小鉢料理のなかに生きている。
料理の説明は多くないけれど、ショーケースを前にして奥さんと話すうちに、自然とその日のおすすめを知ることになる。それが、この店らしいやりとりのかたちなのかもしれない。
