お次は6月10日解禁の山国川。湖産鮎を狙う
青の洞門から本流を辿ってあちこち川見をするけれど鮎がいない。石は磨かれているようだが鮎が見えない。洞門鮎はどこだ?それでもあの渕この瀬、去年の夢をたどって竿を出すけれど目印が波間に揺れるばかり。仕方なくダム上の支流を目指すことにした。去年、友釣りを始めたばかりの還暦間際の若者が初めて鮎を掛けた川である(※下段2023年の釣行記参照)。実はここも湖産鮎に富み、楽しい釣りができるのだが湖産の特徴で小ぶりである。山国の鮎釣り師はビッグな洞門鮎と格闘したくて本流に詰めるので、それでジイちゃん向きの瀬が残されるのである。通称〝年金の瀬〟。
川底が光った瀬にジッと目を凝らす。いるいる、群れでじゃれ合いながら、石をグルグル取り囲みコケをサッサッとかじり取っている、中に群れから飛び出して追い出したのもいる。いいぞいいぞ、いそいそハナカンをセットしてオトリを瀬へ押し出す。本流では複合を結んだがここは祓川と同じ仕掛けだ。
水中糸を張らず緩めず泳がせる、時々ツンツンと糸を張って釣り人の意図を伝える。オトリ君は群れの中に立ち止まったりちょっと焦らすように尻尾を振ったりしながら野鮎をそそのかし、かきたてにかかる。と思ったら早速掛かった。水の中でキラリとヒラを打った姿は小さいけれど逸走遁走、よっしゃーと引き抜く。
【大分県中津市】炎天下の山国川で“青の洞門アユ”を恩讐を超えて釣る | 釣りビジョン マガジン |
なんとなんと〝入れ掛かり〟に突入する!
一番乗りの鮎を次のオトリへと繋いでいく。まるで螺旋のバネが弾けるように循環が展開して昼のひとときほぼ入れ掛かり。祓川のこともあって、魚の気まぐれにしごき抜かれた後の忍耐とか寛容とか、ちょっと修行めいた釣りを重ねて来たけれど、この日は心が開いてのびのび動き始める。
オトリが蹴られたり弾かれたりしたので、ハリを7号に換えてみた。循環も上手くいって、そんな時には重いハリを結んでも根掛かりはない。ちょっと群れを崩してみようと蝶バリにしたり、もっと泳がせる楽しさを味わおうと背カンを使ったりと試してみる、鮎はどれにも掛かった。
魚に対する観念を具体的な釣り方から抽象して引き出しにしまう。長年、釣りに勤しんできたので引き出しはいくつもある。ただそれがどこにあるか思い出せないだけである。
三十匹はいったか?大きいのや小さいの、中には背ビレがアブラビレに届くのもいて、これはきっと湖産だと思われた。15cm以下は採捕禁止なので一匹一匹選んで瀬に返す。手で掴んで頭と尻尾が出るとそれが15cmだ。魚が元気よく瀬に消えると何か自然の一端に自身も繋がっているように感じられて、ああ長生き出来そうな気になる。
さて、昼をはるかに過ぎた、早起きに朝駆けで腰が落ち顎が出かかる、そうだ温泉へ行こう。
ダム湖の上流にはいい温泉がいくつかあって、老いの身魂をほどいてゆったりくつろがせてくれる、鮎タイツでできるアセモ快癒の特効薬でもあるしね。ということで余生の一日を、佳き釣りの日として過ごすことができたのであった。

