「逮捕されるの?」へずまりゅう奈良市議が"職質"報告、地方議員にも「不逮捕特権」あるの?

「逮捕されるの?」へずまりゅう奈良市議が"職質"報告、地方議員にも「不逮捕特権」あるの?

元「迷惑系YouTuber」で、奈良市議会議員のへずまりゅう氏が、自身のXで、警察官から職務質問を受けたと投稿。「自分は逮捕されてしまうのでしょうか?」と疑問を投げかけた。

投稿によると、へずま氏は警察官に対して「議員と会社経営をしている」と伝えたが、身分証の提示を求められて「任意だから」と応じなかったという。実際に職務質問を受けたかどうかは明らかではない。

国会議員には「不逮捕特権」があるとされているが、市議会議員はどうだろうか。刑事事件にくわしい澤井康生弁護士に聞いた。

●国会議員にある「不逮捕特権」は地方議員にない

──市議会議員など、地方議員は逮捕されることがあるのでしょうか。

国会議員には、憲法上の権利として「不逮捕特権」が認められています(憲法50条)。この制度趣旨は、行政権力による政治的な妨害から議員を守り、国民の代表者として自由に活動できるようにすることとされています。

憲法50条:両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、国会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。

ただし、不逮捕特権といっても、絶対に逮捕されないわけではありません。国会会期中は、所属する議院の許諾がなければ逮捕されないというだけで、現行犯なら逮捕されます。

一方で、地方議員にはこのような不逮捕特権を定めた規定はありません。

そもそも不逮捕特権は、法の下の平等(憲法14条)の例外として憲法が特別に認めた制度とされ、適用を安易に拡大すべきではないと考えられています。

実際に、地方議員にも不逮捕特権が及ぶかが争われた下級審判例(大津地裁昭和38年2月12日判決)でも、国会議員と地方議員では権能は異なるとして、地方議員には不逮捕特権は認められないと判断されています。

したがって、地方議員であっても、逮捕の理由と必要性が認められれば逮捕されることになります。

●過去には「議会閉会後」に逮捕された県議も

地方議員の逮捕は、実際に前例がある。

たとえば2023年6月には、鳥取県議(当時)が、定例県議会の閉会後に詐欺容疑で逮捕された。その後、懲役3年6カ月の実刑判決が確定している。

【取材協力弁護士】
澤井 康生(さわい・やすお)弁護士
警察官僚出身で警視庁刑事としての経験も有する。ファイナンスMBAを取得し、企業法務、一般民事事件、家事事件、刑事事件などを手がける傍ら東京簡易裁判所の非常勤裁判官、東京税理士会のインハウスロイヤー(非常勤)も歴任、公認不正検査士試験や金融コンプライアンスオフィサー1級試験にも合格、企業不祥事が起きた場合の第三者委員会の経験も豊富、その他各新聞での有識者コメント、テレビ・ラジオ等の出演も多く幅広い分野で活躍。陸上自衛隊予備自衛官(2等陸佐、中佐相当官)の資格も有する。現在、早稲田大学法学研究科博士後期課程在学中(刑事法専攻)。朝日新聞社ウェブサイトtelling「HELP ME 弁護士センセイ」連載。楽天証券ウェブサイト「トウシル」連載。毎月ラジオNIKKEIにもゲスト出演中。新宿区西早稲田の秋法律事務所のパートナー弁護士。代表著書「捜査本部というすごい仕組み」(マイナビ新書)など。
事務所名:秋法律事務所
事務所URL:https://www.bengo4.com/tokyo/a_13104/l_127519/

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