高齢者に多い誤嚥性肺炎は、食事中や食後だけでなく、実は寝ている間にも起こることがあります。今回は、寝ている間の誤嚥性肺炎を防ぐにはどうしたら良いのか、「あゆみ野クリニック」の岩崎先生に解説してもらいました。

監修医師:
岩崎 鋼(あゆみ野クリニック)
宮城県石巻市あゆみ野クリニック院長。体調に合わせた保険診療内での煎じ薬治療を実践。元東北大学附属病院漢方内科臨床教授。元日本東洋医学会東北地区専門医制度委員長。元日本老年医学会評議員。東北大学医学部出身、老年内科で医学博士取得。その後漢方内科に移籍。
編集部
寝ている間の誤嚥性肺炎を防ぐにはどうしたら良いのでしょうか?
岩崎先生
寝る前に、口の中にある食べ物の残りかすや細菌をできるだけ綺麗にしておくことが大事です。高齢者、特に要介護高齢者の方は、食べた後と寝る前にきちんと口腔内洗浄、つまり歯磨きをしていただきたいですね。
編集部
基本的なことですが、大事なのですね。
岩崎先生
全国の歯科医で行ったある研究によると、きちんと歯科医の指導の下に、寝る前に歯磨きをした要介護高齢者では、それらをしなかった同じ要介護高齢者に比べて、肺炎の発生率が半分に減ったのです。
編集部
それはすごいですね。ほかに注意しておかなければならないことなど、ありましたら教えてください。
岩崎先生
高齢化にともない認知症の方も増え、妄想や幻覚、昼夜逆転などの「BPSD(認知症の行動・心理症状)」の患者さんが増えてきています。BPSDに対して処方される薬の一つである「抗精神病薬」を服用している高齢者も多いかと思いますが、この薬にはドーパミンを抑える作用があるため、嚥下反射が弱くなり、誤嚥を起こしやすいと言われています。最近はさまざまな医療機関が、このような抗精神病薬の使用に踏み切る前に抑肝散(よくかくさん)や加味帰脾湯(かみきひとう)など、まず漢方薬を試すことが多くなりました。これらの漢方薬は現代医学的な治験でBPSDに有効との結果が出ているからです。また、半夏厚朴湯(はんげこうぼくとう)という漢方薬はこのようなフレイルの高齢者の肺炎を減らしたというデータもあります。
編集部
漢方も有用なのですね。
岩崎先生
一方、食事の中に唐辛子を活用することも薦められます。なぜなら唐辛子の辛味成分であるカプサイシンが嚥下反射、咳反射を改善することは昔から有名だからです。粉唐辛子をうっかり吸い込めば誰でも咳き込みますが、つまりそれこそ「カプサイシンは嚥下反射、咳反射を誘発する」という分かりやすい例です。高齢者施設で出されるカレーは、「これがカレーか?」と思うぐらい辛みがありませんが、もう少しカレーらしい辛みを付ければカレーは立派な誤嚥性肺炎予防食になるでしょう。
編集部
最後に、メディカルドック読者へのメッセージをお願いします。
岩崎先生
ただでさえ高齢者は誤嚥性肺炎のリスクが高いですが、認知症に対するお薬が、さらにリスクをあげてしまうこともありますので十分に注意してください。誤嚥性肺炎予防のコツは、寝る前の歯磨き、抗精神病薬の使用を抑え、漢方を応用、唐辛子を色々工夫して高齢者の食に活かすことです。
※この記事はメディカルドックにて<高齢者の「誤嚥性肺炎」は寝ている間に起きているって本当? 寝る前のケアが重要なワケ>と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
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