有料配信で活動再開、吉本興業と松本人志さんに残る課題 「人権とビジネス」の観点から考える

有料配信で活動再開、吉本興業と松本人志さんに残る課題 「人権とビジネス」の観点から考える

●伊藤和子弁護士「説明責任は果たされたとは言えない」

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──松本さんの芸能界復帰をどのように受け止めましたか。

一般論として、およそ松本さんが復帰すべきでない、とは言いません。

しかし、それは事実関係を公正に調査して明らかにしたうえで、被害が確認されれば救済を実現し、さらに松本さんも責任をとり、説明責任も果たした──という前提があって初めて成立します。

それを経ないままの復帰には、やはり問題が残ると考えます。

タレント個人だけでなく、吉本興業としての責任も問われていると思います。仮に事実関係に争いがあるのなら、公平中立な第三者委員会を設置し、調査結果を公表すべきだったのではないでしょうか。

松本さん本人も吉本も、記者会見などで説明しておらず、復帰に至る経緯の透明性には疑問が残ります。

●有料配信なら問題ないのか?

──地上波ではなく、有料配信で「見たい人が見る」という形式だから「問題ない」との意見もあります。

たしかに地上波を扱う放送事業者には、放送法などに基づく高い公益性が求められます。しかし、有料配信であっても、関連事業者には「ビジネスと人権」に関する指導原則は適用されます。

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さらに言えば、これは吉本と松本さんだけの問題ではありません。「ビジネスと人権」の考え方に基づく企業責任は取引先にも及びます。

企業は、取引先の人権上のリスクにも対処する責任があります。番組の共演者には、他の事務所所属のタレントもいますが、関係各社は、人権問題が未解決であることをどのように評価して出演を決めたのか、疑問です。さらにいえば、吉本興業と取引関係のある関連企業は「ビジネスと人権」の観点で、どういう認識でいるのでしょうか。

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