身体的な依存から脱却した後も、精神依存や心理的な問題に対処し、再発を防ぐための継続的な支援が欠かせません。認知行動療法や動機づけ面接といった心理療法、家族支援、自助グループの活用など、多角的なアプローチが重要です。ここでは、心理社会的な治療について説明します。

監修医師:
日浦 悠斗(医師)
福井大学医学部卒業。血清蛋白質と精神疾患の関係について研究をおこなう。日本精神科学会専門医。
オーバードーズの心理社会的治療と再発予防
身体的な依存から脱却した後も、精神依存や心理的な問題に対処し、再発を防ぐための継続的な支援が必要です。ここでは、心理社会的なアプローチについて説明します。
認知行動療法と動機づけ面接
認知行動療法(CBT)は、薬物依存症の治療において効果が実証されている心理療法です。CBTでは、薬物使用につながる思考パターンや行動パターンを特定し、それらを変容させることを目指します。例えば、「ストレスがあると薬を使ってしまう」という行動パターンがある場合、ストレスへの対処法(コーピングスキル)を学び、薬物以外の方法で対処できるようにします。
具体的には、薬物使用のトリガー(引き金となる状況や感情)を認識し、それに対する代替行動を計画します。また、渇望が生じたときの対処法や、薬物使用を断る技術(断り方の練習)なども学びます。これらのスキルを繰り返し練習することで、薬物使用のリスクが高い状況でも適切に対処できるようになる可能性が高まります。スキルの習得には時間がかかり、個人のペースで進めることが重要です。
動機づけ面接は、患者さん自身が変化への動機を高めることを支援する手法です。依存症の患者さんは、変化に対して両価的(変わりたい気持ちと変わりたくない気持ちが共存している)であることが多いため、一方的に指導するのではなく、患者さん自身が変化のメリットとデメリットを探索し、自ら決断できるように支援します。
家族支援と社会資源の活用
依存症の回復には、家族の理解と協力が重要です。家族に対する心理教育プログラムでは、依存症のメカニズムや適切な対応方法について学びます。家族が患者さんの薬物使用を無意識のうちに助長してしまう行動(イネイブリング)を認識し、健康的な境界線を設定することが目標とされます。
また、家族自身も大きなストレスを抱えていることが多いため、家族への心理的サポートも必要です。家族会や自助グループ(Al-Anonなど)に参加することで、同じ経験を持つ方々と交流し、情報交換や感情の共有ができます。
自助グループへの参加も回復に有効とされています。ダルク(DARC:薬物依存症リハビリテーション施設)やNA(ナルコティクス・アノニマス:薬物依存症の自助グループ)などでは、同じ問題を抱える仲間との交流を通じて、依存症からの回復を目指します。ピアサポート(当事者同士の支え合い)は、孤立感を減らし、回復への希望を持つために重要な役割を果たします。
まとめ
オーバードーズは市販薬や処方薬を過量摂取する行為で、身体・精神の両面に深刻な影響を及ぼす可能性があります。治療には身体管理、離脱症状への対応、認知行動療法などの心理社会的アプローチが必要です。精神保健福祉センターや依存症外来など、専門的な相談先を活用し、早期に適切な支援を受けることが回復への鍵となります。
オーバードーズに関する悩みや不安がある場合は、一人で抱え込まず、医療機関や相談窓口に連絡してください。適切な支援を受けることで、回復への道を歩むことができます。
参考文献
厚生労働省:薬物乱用防止に関する情報
国立精神・神経医療研究センター:薬物依存症について
精神保健福祉センター:依存症相談窓口

