ペダル付き電動バイク「モペット」の交通マナー違反が問題となっている。
歩道をスピードを出して走るモペットに冷や汗をかいた──。そんな声をSNS上でも頻繁に見かけるようになった。
モペットをめぐって道路交通法が改正されてから11月1日で1年が経過した。
毎日新聞(10月21日)によると、モペットについて、2024年に全国で警察が2538件の交通違反を検挙していたことが警察庁への取材でわかったという。これは2023年の約7倍の数字だとしている。
登場して間もない移動手段のモペットだが、ペダルが付いているから「自転車」だと勘違いしている人も少なくないのではないか。モペットで歩道を走ると、どんな違反になるのか。交通問題にくわしい松本洋明弁護士に聞いた。
●モペットは「バイク」である
──そもそも「モペット」とは法的にどんな扱いになりますか。
モペットによる危険運転や交通違反は急増しており、いまや社会問題となっています。歩道をスピードを出して走る行為は、多くの人を危険にさらすだけでなく、法律上も極めて重大な問題を含んでいます。
結論から言えば、モペットは「バイク」であって、自転車ではありません。
まず最も重要な点は、モペットの法的(道路交通法上)な位置づけです。
ペダルが付いているため「自転車の仲間」だと思われがちですが、法律上、ペダルを漕がずにモーターの力だけで進むことができるモペットはバイクであり、モーターの出力に応じて「原動機付自転車(原付)」または「普通自動二輪車」に分類されます。
それでは、私たちが「電動自転車」として認識している車両は何かと言えば、その多くは「電動アシスト自転車」です。
これは、あくまでペダルを漕ぐ力を法律で定められたアシスト比率の範囲内で補助(アシスト)するものであり、漕ぐのをやめれば補助も止まります。これらはバイクではなく「自転車」として扱われます。
つまり、ペダルを漕がなくても走行が可能なモペットは、れっきとしたバイクの一種なのです。この違いが、法的な扱いの大きな分かれ目となります。
──ペダルが付いているからわかりにくいのかもしれませんね。
そうですね。この点は混乱を招きやすかったため、2024年11月1日施行の改正道路交通法でルールが明確化されました。
たとえモーターの電源を切り、ペダルだけで走行していたとしても、「車両の本来の用い方」その行為が原動機付自転車等の「運転」にあたる、と定められたのです。
したがって、「ペダルで漕いでいるから自転車だ」という言い訳は一切通用しません。
●バイクとして課される義務
──モペットの運転者はどのような義務を負いますか。
モペットが法律上「バイク」である以上、運転者はバイクと同じ義務を負うことになります。主なものは以下の通りです。
・運転免許の携帯
・ヘルメットの着用
・ナンバープレートの設置
・自賠責保険(自動車損害賠償責任保険)の加入
モペットの出力に応じた運転免許(原付免許や普通自動車免許など)を取得し、運転時には携帯する必要があります。当然、16歳未満は運転できません。
ヘルメットの着用は義務であり、この点は自転車(努力義務)とは異なります。
また、ウインカー(方向指示器)、ブレーキランプ、バックミラー、ヘッドライトなどの保安部品が正しく装備され、機能することも求められます。
これらの義務を果たしていない状態で公道を走行すること自体が、すでに複数の法律違反を同時に犯している状態ともいえます。

