●歩道走行は「違反」、人をケガさせると重い罰則
──歩道を走るとどのような違反になりますか。
なかでも「歩道走行」は、バイクであるモペットにとって最も典型的な違反行為の一つです。
歩道走行は「通行区分違反」という明確な道路交通法違反にあたります。
たとえ「電源を切ってペダルだけで漕いでいる」状態であっても、車両にまたがって運転している限り「バイクを運転している」とみなされ、歩道走行は許されません。
例外的に歩行者として扱われるのは、エンジン(モーター)を完全に停止させ、かつ、車両から降りて「押して歩く」場合のみと考えられます。
検挙数の急増が示すように、こうした違反には罰則が科されます。
もし免許を持たずに運転すれば「無免許運転」(道路交通法64条)です。法定刑は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
自賠責保険に加入していなければ「無保険運行」(自賠責法5条)となります。法定刑は1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金、かつ違反点数6点で免許停止処分となります。このように重い刑事罰や行政処分の対象となる可能性があります。
──モペットで歩道を走って、歩行者にケガをさせてしまうとどんな問題が生じますか。
万が一、歩道走行などで歩行者と衝突しケガをさせてしまった場合、その責任は自転車事故とは比較にならないほど重くなります。
運転者には「過失運転致死傷罪」(自動車運転処罰法5条)が適用される可能性が高いです。
特に気をつけなければいけないのは、法定刑が「7年以下の拘禁刑もしくは禁錮または100万円以下の罰金」であり、自転車事故で問われることの多い「過失傷害罪」(刑法209条、法定刑は30万円以下の罰金または科料)と比べて、極めて重い罪となることです。
刑事責任を問われるだけでなく、被害者の治療費、通院交通費、仕事を休んだ場合の休業損害、そして精神的苦痛に対する慰謝料など、多額の損害賠償を請求されることになります。
もし自賠責保険や任意保険に未加入であれば、被害者への賠償は全額自己負担となります。
●「自転車のつもりだった」は通用しない
──ほか、注意点があれば教えてください。
重要なことなので繰り返しますが、手軽に見えるモペットは、法律上は「バイク」です。
「自転車のつもりだった」という認識のズレが、検挙数の急増、そして重大な事故を招く温床となっていると考えられます。
運転する人は、モペットが「バイク」であることを再確認し、免許、保険、装備、そして交通ルール(車道走行)を徹底して守るよう強く意識していただきたいと思います。
【取材協力弁護士】
松本 洋明(まつもと・ひろあき)弁護士
2010年弁護士登録(大阪弁護士会所属)。交通事故関連事件の取扱い多数。
事務所名:弁護士法人ブライト
事務所URL:https://law-bright.com/

