●食事の誘いなどをされた場合に、どう対応すれば良い?
1)警察は間に入ってくれない
お礼の請求や支払いは、遺失物法に基づくものですが、具体的な金額の決定や金銭の受け渡しは当事者同士の民事上の問題です。
警察は民事上の紛争には介入しないという原則を厳格に守っています。そのため、落とし主が警察に「お礼を預けるので代わりに渡してほしい」「拾った人に伝言してほしい」と頼んでも、警察はトラブル回避のため、こうした仲介業務を断ります。
警察の役割は、お礼を求める拾得者の連絡先を落とし主に伝えることまでで、その後の金銭のやり取りには関わってくれません。
2)駅も仲介してくれない
駅などの施設も、お礼の受け渡しを仲介することには消極的です。
駅は一時的に落とし物を預かる管理者であり、お礼は返還後に発生する当事者間の問題です。駅側に仲介を行う法的な義務はなく、明確な業務規定もありません。金銭トラブルのリスクや余計な業務負担を避けるため、「当事者同士で解決してほしい」という対応をとることがほとんどです。
3)弁護士に頼むのは現実的ではない
第三者の協力が得られない場合、法的な手続きを代理してもらうため弁護士に依頼するという方法もあります。
しかし、数千円から数万円程度のお礼のやり取りのために弁護士に依頼することは、費用の面から現実的ではありません。弁護士費用が高額になるため、経済的な負担がお礼のリスクを大幅に上回ってしまいます。
4)家族や知人に協力してもらう方法
公的機関の協力を得られず、弁護士への依頼も現実的でないとなると、家族や親しい知人に協力を依頼することが現実的でしょう。落とし主の代わりに家族や知人が拾得者と連絡を取り、お礼の額の相談や受け渡しの調整を代行することができます。
ただし注意点があります。法律上、報酬を得る目的で他人の法律事務を扱うと弁護士法違反(非弁行為)となります。家族や知人が無報酬で単なる連絡や物品の受け渡しを代行するだけであれば、弁護士法違反にはならないと考えられます。
ただし、報酬を受け取って法的な交渉そのものを代行することはできないので注意が必要です。
監修:小倉匡洋(弁護士ドットコムニュース編集部記者・弁護士)

