●「贈与した」と評価された場合はどうなる?
──「贈与した」と評価された場合、相続へはどう影響しますか。
事業者が亡くなった会員の遺族に商品券を贈与したと評価されるのであれば、遺族は相続財産を処分したものではないと評価されるでしょうから、単純承認とはみなされず、相続放棄をすることができると思われます。
一方、クレジットカードのポイントが規約上相続の対象となる旨定められている場合は、ポイントを商品券に換えて受領することは、相続財産を処分したと評価されるのが原則と思われます。
ただし、クレジットカードのポイントは有効期限があるでしょうから、換えた商品券を使用せずに、他の相続人または相続財産管理人に引き渡すまで管理し続けるのであれば、有効期限によりポイントが失効することを避ける保存行為と評価され、単純承認とはみなされず、なお相続放棄が認められる可能性もあるかと思います。
●生前に備えておくことは?
──今回の相談事例のように、故人がためていたポイントの扱いで相続人がトラブルになったり、悩んだりするケースがあります。遺族がスムーズに手続きを行えるよう、生前にやっておくべきことや、遺言書などで明記しておくべきことはありますか。
今回のケースでは、オペレーターに会員が死亡している旨及び相続放棄を予定している旨を伝えたところ、亡くなった会員のポイントを商品券に交換することを提案されたとのことでした。
しかし、仮に事業者に会員が死亡していることを伝えずにポイントを商品券に換えた場合、刑事上の詐欺罪が成立する可能性がありますので、決してそのような行為はしないよう留意する必要があります。
ポイントが相続の対象とならない場合でも、会員の生前にポイントを使用し商品に換えておけば、その商品は相続の対象となります。多額のポイントがあるような場合は、生前に商品に換えておくと良いでしょう。
ポイントが相続の対象となる場合は、遺言書において誰が相続するのか記載しておくのがよろしいでしょう。
【取材協力弁護士】
関根 翔(せきね・しょう)弁護士
東京弁護士会所属。早稲田大学法学部、早稲田大学法科大学院を卒業。新司法試験に合格し、司法修習後、2013年に弁護士登録。都内法律事務所から独立し、令和元年5月に池袋副都心法律事務所を開設。離婚事件、借金問題、労働事件、相続問題、交通事故、不動産問題、刑事事件等の分野を扱っている。
事務所名:池袋副都心法律事務所
事務所URL:https://ikebukuro-houritsusoudan.com/

