高血圧患者には睡眠障害が高い頻度で併存することが知られており、睡眠時無呼吸症候群、不眠症、概日リズム障害などが主要な睡眠障害として挙げられます。これらの睡眠障害は高血圧の治療効果を低下させるだけでなく、心血管疾患のリスクをさらに増大させます。深いノンレム睡眠の減少や夜間の中途覚醒の増加などが特徴的です。ここでは、高血圧と睡眠障害の関連について説明します。

監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
高血圧患者における睡眠障害の特徴
高血圧患者には睡眠障害が高い頻度で併存することが知られており、睡眠時無呼吸症候群、不眠症、概日リズム障害などが主要な睡眠障害として挙げられます。特に睡眠時無呼吸症候群は高血圧患者に併存し、血圧管理を困難にする重要な要因となっています。これらの睡眠障害は高血圧の治療効果を低下させるだけでなく、心血管疾患のリスクをさらに増大させます。
高血圧患者の睡眠の特徴として、深いノンレム睡眠の減少、レム睡眠の断片化、夜間の中途覚醒の増加などが観察されます。これらの睡眠構造の変化は、血圧の夜間降下を阻害し、心血管系への負担を持続させます。また、高血圧に伴う頭痛や動悸、息苦しさなどの症状が睡眠を妨げ、さらなる血圧上昇を招く悪循環を形成します。
降圧薬と睡眠の相互作用
高血圧の治療に用いられる降圧薬の中には、睡眠に影響を与えるものがあります。β遮断薬は悪夢や不眠を引き起こす場合があり、利尿薬は夜間の頻尿により睡眠を妨げる可能性があります。一方、ACE阻害薬やARBは比較的睡眠への影響が少なく、カルシウム拮抗薬の一部には睡眠の質を改善する作用があるものもあります。
薬物治療を受けている方は、睡眠への影響についても医師と相談し、必要に応じて薬の種類や服用時間の調整を検討することが重要です。
夜間高血圧と心血管リスク
夜間の血圧が適切に低下しない夜間高血圧は、正常な血圧日内変動を示す患者さんと比較して、心血管疾患のリスクが2〜3倍高くなることが報告されています。このため、高血圧患者さんにおいては24時間血圧監視を行い、夜間血圧の評価と睡眠障害の診断・治療を同時に進めることが重要です。
夜間高血圧の改善には、睡眠の質の向上だけでなく、生活習慣の見直しや適切な薬物治療が必要になる場合があります。
まとめ
健康な生活を送るためには、質の高い睡眠を確保することが不可欠です。睡眠は身体と心の回復、自律神経のバランス調整、血圧の適切な管理、免疫機能の維持という多面的な役割を担っています。現代社会では睡眠を軽視しがちですが、睡眠不足や不眠症が引き起こす健康への悪影響は深刻かつ広範囲にわたります。
睡眠不足による影響は、単一の症状として現れるのではなく、自律神経の乱れから始まって高血圧や免疫機能低下へと連鎖的に広がる特徴があります。この相互関係を理解することで、睡眠の重要性をより深く認識することができます。また、これらの影響には個人差があり、年齢、基礎疾患、生活環境によってもその程度は異なることを理解しておくことが重要です。
日々の生活の中で睡眠の質と量を意識的に改善し、必要に応じて専門医との相談も含めた適切な対策を講じることで、より健康で充実した人生を送ることが期待できます。睡眠に関する問題を感じている方は、早期に医療機関を受診し、個々の状況に応じた適切な診断と治療を受けることをおすすめします。
参考文献
[国立精神・神経医療研究センター:睡眠障害ガイドライン
日本循環器学会:高血圧治療ガイドライン

