理沙さんの自宅訪問に恐怖を覚えた美咲は、夫に相談し不安を共有。感染症による自粛で距離を置こうとした矢先、彼女が幼稚園に現れ、無断で陽向に会い写真を撮っていたことが判明しました。
行き詰まりの先に見えた一筋の糸口
理沙さんが陽向の元に訪れた夜。寝かしつけを終えてリビングに戻ると、私は夫に相談しました。
「あなた。今日ね、理沙さんが陽向に会いに幼稚園に来たらしいの。私には何も連絡ないし、写真撮られたって」
「えっ!?だって、ウチに入園予定じゃないんじゃなかったっけ?」
眉を顰める夫に頷きで応える私。夫婦で危機感を共有しつつ、リビングは重苦しい空気が漂い始め、2人して息を詰まらせていました。
「……ねぇ、あなた。ちょっと協力してほしいんだけど……」
わずかな望みに賭けるように、私は夫に真っ直ぐな眼差しを向け、ママ友の執着に対する“最終手段”を伝えました。
家族ぐるみの公園で
「お久しぶりです。自粛はまだ続いてるけど、子どもたちを公園に連れて行きませんか?どうせなら、旦那さんもご一緒に」
翌日、私から理沙さんへ送ったメッセージ。そこからすぐに「誘ってくれて嬉しい!行こう!」と返信があった。日程調整をして、週末の午前中に集まることが決まりました。数日後の週末。私たち家族と理沙さんたち家族は公園に集まりました。自粛ムードの公園はそれ以前の活気をなくし、閑散としていました。
「おはようございます。今日はお招きいただいたそうで、ありがとうございます」
開口一番、理沙さんの旦那さんが爽やかに挨拶をする。それに合わせて私たち夫婦も挨拶を交わし、子どもたちの遊びに移った。子どもたちは溜まったストレスを発散するように動き回り、親たちはただ翻弄されていました。
その最中、目に映る理沙さんの笑顔。それは、いつも二人で会う時とは違う、無垢な笑顔に見えて、そう思った瞬間、胸の奥がキュッと閉まるような感覚を覚えました。しばらくすると砂場遊びに落ち着き、親たちも息を整えながら子どもたちのそばに付いていました。そして、いよいよ私たち夫婦は行動を起こしました。
美咲「……そういえば理沙さん。この前、陽向がお世話になったみたいで。ありがとうございました」
美咲の夫「そうだったみたいですね。お世話様でした」
理沙「えっ?」
彼女は何を言われているのか分からずに唖然とした様子。そこに私は、さらに畳みかけました。
「ほら、ウチの幼稚園に来て陽向の写真撮ってくれてたみたいで。陽向、喜んでました!」
私がそう言った瞬間、穏やかな彼女の表情が引きつるのを感じました。理沙さんの旦那さんの表情が曇るのを横目に感じます。
「陽向から後で送ってくれるって聞いてたんですけど、まだきてなくて。送ってもらえます?」
彼女の表情からは「まずい」というような感情が滲み出ていて、旦那さんも彼女に疑いの目を向けていました。
「理沙。たしか佐藤さんたちと違う幼稚園に入園させるんだったよね?なんで行ったの?」
痺れを切らした旦那さんが理沙さんに訊ねます。
「……ほら!色んな幼稚園の雰囲気とか知りたくて。それに陽向くんとはよく遊ぶし!会えたらいいなぁって……」
弁明の様子から、彼女の余裕のなさが窺えました。次第に理沙さんは気まずそうに言葉が出なくなっていきました。
「よそのお子さんの保育中に勝手に写真を撮るって失礼だろ?怪しまれるような行動だぞ」
少し語気を強めて、でも愛を持って理沙さんを叱る旦那さん。理沙さんは旦那さんの言葉に委縮したのか、震える声で謝罪の言葉を述べ始めました。

