猛暑の夏から秋、冬へ。寒くなる季節のペット防災を考える【獣医師解説】

猛暑の夏から秋、冬へ。寒くなる季節のペット防災を考える【獣医師解説】

写真:PIXTA

今年は歴史的な猛暑が続いた影響で、ペットの体調管理も苦労されたと思います。これから訪れる冬も、さらに気候の変化が大きくなる時期です。

この時期に停電を伴う地震や風水害が起きた場合、寒さへの備えが不十分だとペットの健康に影響を及ぼすおそれがあります。そこで今記事は、寒冷期におけるペット防災の注意点を解説します。

ペットは気温の変化に強くない

ペットとして飼われている多くの犬や猫は空調が効いた室内で暮らしているため、自然環境の温度変化への適応力が弱くなっている傾向があります。

特に、寒い季節に停電や避難が発生した場合、室温が一気に低下することで、体調不良を起こしやすくなります。被毛の量や体格、年齢、持病の有無によって寒さの影響は大きく異なるため、注意が必要です。

犬の場合

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犬は種類によって寒さへの耐性が大きく異なります。大型犬や長毛種は比較的寒さに強い一方で、小型犬や短毛種、特にチワワやイタリアングレーハウンドなどは寒さに弱く、低体温を起こすリスクがあります。

停電により暖房が使えない状況では、犬は体を丸めて震えたり、食欲が落ちたりすることがあります。

体温低下は免疫力の低下につながり、老犬や関節疾患のある犬は冷えによる痛みが生じることも。毛布や衣服を活用して体を保温することが大切です。

猫の場合

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猫はもともと砂漠地帯原産の動物のため、暑さには比較的強いものの、寒さには強くない傾向があります。寒くなると動きが鈍くなり、水を飲む量やトイレの回数が減ることで、膀胱炎をはじめ泌尿器のトラブルが生じやすくなるため注意が必要です。

長毛種も急な室温低下に気をつけましょう。例えば、毛布や段ボールで囲いを作るなど、冷気に触れない工夫をしてください。キャリーケース内に毛布やカイロを敷いておくと、避難時に保温がしやすくなります。

小動物(ハムスター、フェレット、うさぎ)

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小動物は体が小さく、外気温の影響を強く受けます。ハムスターやフェレットは10℃以下になると活動が鈍り、疑似冬眠のような状態になることも。また、うさぎも寒さによって食欲が落ち胃腸の動きが低下して消化不良を起こすことがあります。

こうした小動物には、普段からケージ内に木材チップを多めに敷いて断熱性を高め、布や毛布をケージの上からかけるなどの対策が有効です。停電時でもカイロやペット用ヒーターを使えるよう、乾電池式や充電式のものを準備しておくと安心です。

気温変化にどう対応するか

停電時にエアコンやヒーターが使えなくなると、室温は急速に低下します。冬の夜間は特に冷え込みが厳しく、屋外避難となる場合はさらに過酷な環境になります。

その際に、まず大切なのは「いかに冷気に触れないようにするか」です。ドアや窓の隙間をタオルや段ボールでふさぎ、ペットの寝床を床から少し高い位置に置くだけでも体感温度が変わります。

また、寒さ対策のほかに環境の変化によるストレスにも十分配慮しましょう。避難先では、ペットが安心できる毛布やタオルなど「においのついたもの」を持参することで、ペットのストレス軽減にもつながります。

防寒に役立つグッズ

寒い時期の防災対策には、次のようなアイテムを非常用持ち出し品に加えておくとよいでしょう。

■温湿度計
環境省の指針によれば、犬・猫の飼育環境は通年で20〜23℃前後に保つことが基本とされています。停電時はこの基準を目安に、防寒対策の調整を行いましょう。

■木材チップ・敷材
小動物用のケージに多めに敷き、断熱性を高めましょう。

■毛布やタオル
ペットを包んで体温を保ち、避難先でも安心感を与えます。サイズの小さなものであれば「かまくら」のように巣ごもりでき、寒さをしのいだり、ストレス軽減に役立てたりすることも可能です。

■ペット用防寒ウェア
犬・猫用の服やブランケットなど、特に短毛種の防寒に効果的です。

■カイロ
「貼るタイプ」「使い捨てタイプ」ともに便利です。誤食を防ぐためにタオルなどで包んだり、ケージにつけたりするなど、ペットが直接触れないように対策して使用しましょう。

配信元: 防災ニッポン