
のんが主演を務めるドラマ「MISS KING / ミス・キング」(毎週月曜夜8:00、ABEMA・全8話)。本作は将棋界を舞台に、天才棋士の父に人生を奪われた主人公・国見飛鳥(のん)が、その深い憎しみから開花させた将棋の才能と、まっすぐに突き進む意志の強さで、自らの人生を取り戻していくヒューマンドラマ。プロデューサー・小林宙氏が、のん演じる主人公・飛鳥の“天才の描き方”について語った。
■『MISS KING / ミス・キング』は愛の物語
現在、第6話まで配信されておりますが、序盤ののんさん演じる飛鳥や藤木直人さん演じる藤堂の“復讐する”という強い思いから、また違った物語になっていると思います。そして序盤から嫌なやつ感が出ていた森愁斗さん演じる龍也や、山口紗弥加さん演じる香の思いが少しずつ見え、鳴海唯さん演じる由奈の棋士を目指す上での女性であることへの不可抗力的な諦念など、一見敵側だったキャラクターの裏側が見えてきて、人間ドラマの要素が色濃くなってきたかと思います。
各キャラクターに共通しているのは、何かしらの損失があって、孤独であるということです。1人ぼっちという意味ではなくて、1人で背負わなくてはいけない強い思いが各々にあるという風に描いています。そしてこれから配信されるラストは個人的にはラブストーリーだと思っています。というより最初から『MISS KING / ミス・キング』の愛の物語だと思って作っています。
1つのドラマや映画制作に携わる人の人数はとても多いです。毎日の撮影現場で50人前後、そして実際撮影現場にいなくても、編集、宣伝・広報、編成、営業、音楽、法務、脚本など上げたらキリがないくらい制作過程には重要な仕事がたくさんありまして、その人数はとても多いです。
なので、よくドラマや映画は「総合芸術」と言われます。ただそう言われると孤独ではなくて、チームワークがよく、仲良しこよしかと思われますが、ちょっと違います。かと言って仲が悪いというわけでもありません。独特の緊張感があります。
監督やプロデューサーを中心に意思決定はされますが、いろんな部署の思いが互いにぶつかり合って、時に監督やプロデューサーの意見は覆されて決まる時があります。例えば衣装1つとっても衣装担当のスタッフの意見は大切にされ、尊重されます。
なので、1人1人のスタッフの責任は重要です。過程ではなく、結果がシビアに評価されます。その点では制作現場はとても孤独です。孤独の中で自分で背負って、各部署が答えを出すことを求められます。俳優も同じです。
よく取材などがあると、「専門的なセリフを覚えてすごいですね」とか「すごいセリフ量ですね」などインタビュアーの方が言ってくださるのに遭遇するのですが、制作現場でそれを評価する人をあまり見たことがありません。俳優にとってセリフを覚えることは当たり前ですし、それに努力することは当然ですし、そしてスタッフも俳優同様、同じくらい結果を求められて出しているのが制作現場です。みんな制作の進行を止めることが怖くて、その緊張感は常にあります。
結果がシビアに求められる職場はちょっと前時代的だとは思いますが、そこは将棋の棋士の方々とも同じように思いました。棋士は対局に臨むのにとても準備をするでしょう。相手の研究をして、色々な場面を想定して、いざ対戦して、研究した結果を出した中で、無慈悲に想定外のことが起きてからが本当の勝負になります。
制作現場も同じです。例えば俳優がめちゃくちゃ準備して撮影現場に臨んでいるのに、現場で監督に全否定されるのを見たことが何度もあります。その時に俳優の真価が問われます。のんさんはそういうことがあったら「負けたくない」「燃える」と言っていましたが、その自分の否定を楽しめる俳優はいい俳優だと思います。
「総合芸術」という意味でも、将棋も棋士2人の対局で、盤面を一緒に作り上げるゲームで、撮影と似ているところが多いなと感じます。なので、『MISS KING / ミス・キング』に出演してくださっている俳優の皆さんは、のんさんにしても、藤木直人さんにしても、将棋の面白さに気がついたり、かっこいいという感じてくださったりしているのは、俳優として共感できるところが多かったのだと思います。
自分1人でしか背負えない状況が、棋士と俳優は似ていますし、かと言って、誰かと何かを作り上げなくてはいけない独特の緊張感を楽しめる、同じ種類の人間だと思っています。どちらも孤独と戦い、孤独を楽しめる勝負師だと、ドラマを通じて感じました。
■対局場にもスタッフのこだわりが
ドラマのこだわったところでいうと、“対局場”はこだわりました。第5話で由奈(鳴海唯)と飛鳥(のん)対局した場所は豪奢な洋館を。第6話で龍也(森愁斗)と飛鳥(のん)が対局した場所は、ゲーム会場のような現代的な場所。また第1話の、中村獅童さん演じる彰一の対局場所は荘厳な神社でした。
そのような会場やオープンなスペースで対局することはリアルではあまりないかもしれませんが、将棋の持つ日本文化の格をドラマとして描くにはどうしたら良いのか考えてそのような会場にしました。ロケ地を探すスタッフは非常に大変だと思いますが、おかげで日本の建物の多様性が美しく感じられる、いい映像になっていると思います。
また衣装ものんさん演じる飛鳥の衣装は話が進むにつれて、徐々に洗練されていき、それは美しさもですが、勝負師の覚悟がにじみ出るクールな格好になっていきます。そのようなロケ場所や、衣装なども各々スタッフが結果を出してくれました。
プロデューサーをやっていると全体を管轄するという曖昧な仕事をしているので、キャスト含め各スタッフの深い仕事に感謝することがとても多いです。どの仕事もやりがいや面白みがあると思います。本当はスタッフのエンドクレジットなどで1つ1つエピソード含めて説明したいくらいですが、おそらく1冊の本になるくらいの分量になる感じがしまして、控えます。よくキャストが「スタッフさん」と「さん」呼びするところを見ますが、その気持ちはよくわかります。本当に色々な人が携わっています。ただ孤独です。孤独故に、愛が深い人が多いです。
残りの第7話と第8話でこのドラマは終わります。冒頭で言いましたが、個人的には『MISS KING / ミス・キング』はラブストーリーだと思って作ってきました。6話までご覧になった方はピンとこないかもですし、もちろん単純な男女の色恋沙汰というラブストーリーというわけではありません。愛をこじらせた孤独な人々の帰結を、孤独なスタッフとキャストが目一杯作りました。11月10日(月)夜8:00から無料配信開始です。是非ご覧ください。


