脊柱管狭窄症の治療には、内服薬や注射といった保存療法からリハビリテーション、さらには手術までさまざまな選択肢があります。「それぞれの方法にどんなメリット・デメリットがあるのか」「症状や状態に応じた治療選びのポイントは?」などを、リペアセルクリニック札幌院の黄金先生に聞きました。

監修医師:
黄金 勲矢(リペアセルクリニック札幌院)
2006年3月札幌医科大学医学部医学科卒業。札幌医科大学附属病院、市立室蘭総合病院、済生会小樽病院、北海道立江差病院、滝川市立病院、University of California, San Francisco, Department of Orthopedic Surgery、札幌医科大学医学部整形外科学講座助教・講師などを経て、2024年5月医療法人美喜有会リペアセルクリニック札幌院院長。日本再生医療学会、日本整形外科学会認定整形外科専門医、日本整形外科学会認定脊椎脊髄病医、日本脊椎脊髄病学会脊椎脊髄外科指導医。
脊柱管狭窄症の治療法、それぞれのメリットとデメリット
編集部
内服薬での治療にはどんなメリットとデメリットがありますか?
黄金先生
内服薬は、痛みやしびれを和らげるために処方されます。消炎鎮痛薬や神経の血流を改善する薬が中心で、自宅で続けやすいのが大きな利点です。ただし、内服薬での治療はあくまで症状を抑えるもので、根本的な原因を治すわけではありません。また、長期服用で胃腸障害や腎機能への影響といった副作用が出る可能性もあるため、定期的なチェックが必要です。
編集部
注射治療にはどんな特徴があるのでしょうか?
黄金先生
注射治療、特に神経根ブロックや硬膜外ブロックは、狭窄で圧迫された神経周囲に薬を直接届けるため、痛みを即座に軽減しやすいという大きなメリットがあります。日常生活を取り戻す助けになる一方、効果は一時的なことが多く、数週間から数カ月で症状が出現することがあります。また頻回の注射は合併症リスクがあるため、慎重に回数を検討する必要もあります。
編集部
手術治療のメリットとリスクは?
黄金先生
手術は、狭くなった脊柱管を広げて神経の圧迫を取り除く唯一の根本治療といえます。歩行障害が改善し、再び長い距離を歩けるようになる患者さんも多くいます。ただし、手術には出血や感染、合併症のリスクが伴いますし、入院やリハビリテーション(以下、リハビリ)も必要になります。また、高齢者や持病のある人ではリスクが高くなるため、慎重な判断が求められます。
編集部
リハビリにはどのような効果がありますか?
黄金先生
リハビリは、腰や下肢の筋肉を鍛え、関節や神経の負担を軽くすることを目的としています。ストレッチや体幹強化、歩行訓練などを通して、症状を和らげながら再発予防にもつながるのがメリットです。ただし、効果が出るまでに時間がかかることや、自己流では悪化させる恐れもあるため、専門家の指導のもとで続けることが大切です。
そもそも脊柱管狭窄症はどのような疾患なのか?
編集部
脊柱管狭窄症とは、そもそもどんな病気ですか?
黄金先生
脊柱管狭窄症は、背骨の中にある神経の通り道(脊柱管)が加齢などで狭くなり、神経が圧迫される病気です。代表的な症状は、歩くと足がしびれたり痛んだりして休むと回復するというもので、これを間欠性跛行(かんけつせいはこう)といいます。進行すると日常生活に大きな支障をきたします。高齢者に多い疾患ですが、中年以降から注意が必要です。
編集部
なぜ脊柱管が狭くなってしまうのですか?
黄金先生
原因の多くは、加齢に伴う椎間板や靱帯の変性です。椎間板が膨らんだり、靱帯が厚く硬くなったりすることで管の中が狭くなり、神経を圧迫します。さらに、骨の変形や「すべり症」が加わると症状が悪化しやすくなります。生活習慣や遺伝的な要因も影響しますが、誰にでも起こりうるため“背骨の老化現象”といっても過言ではありません。
編集部
症状にはどんな特徴がありますか?
黄金先生
典型的なのは、一定距離を歩くと足に痛みやしびれが出て、休むと改善する間欠性跛行です。腰痛よりも下肢の症状が目立つことが多いです。進行すると歩行距離が短くなり、日常生活が制限されます。さらに重度になると排尿障害や強い神経障害が出ることもあります。
編集部
一般的な腰痛とはどう違うのでしょうか?
黄金先生
一般的な腰痛は筋肉や関節の炎症によることが多く、安静にすると改善するケースが多く見られます。一方、脊柱管狭窄症は神経が圧迫されて起こるため、足のしびれや間欠性跛行といった特徴的な症状を伴います。腰痛としびれがセットになって長引く場合は脊柱管狭窄症を疑い、専門的な検査が必要になります。

