睡眠不足で免疫機能低下するって本当?意外なメカニズムについて医師が解説

睡眠不足で免疫機能低下するって本当?意外なメカニズムについて医師が解説

睡眠不足による免疫機能低下は、複数のメカニズムによって引き起こされます。睡眠不足によりコルチゾールなどのストレスホルモンが持続的に高値を示すことで、免疫細胞の機能が抑制されます。また、自律神経のバランスが崩れ、特に副交感神経の活動低下によって免疫機能が抑制されます。ここでは、睡眠不足が免疫システムに与える具体的な影響について詳しく説明します。

伊藤 有毅

監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

専門領域分類
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

睡眠不足による免疫機能低下のメカニズム

睡眠不足による免疫機能低下は、複数のメカニズムによって引き起こされます。第一に、睡眠不足によりコルチゾールなどのストレスホルモンが持続的に高値を示すことで、免疫細胞の機能が抑制されます。コルチゾールは抗炎症作用を持つ一方で、過度に分泌されると免疫細胞の増殖や活性化を阻害し、感染に対する抵抗力を低下させます。
第二に、睡眠不足により自律神経のバランスが崩れ、特に副交感神経の活動低下によって免疫機能が抑制されます。副交感神経は免疫細胞の活性化や抗体産生を促進する作用があるため、その機能低下は免疫システム全体の働きを弱めます。また、睡眠不足により成長ホルモンの分泌が減少し、免疫細胞の成熟や組織修復能力が低下します。

細胞性免疫への特異的影響

睡眠不足は特に細胞性免疫に強い影響を与え、T細胞の機能低下やナチュラルキラー細胞の活性減少を引き起こします。これらの細胞は、ウイルス感染細胞や腫瘍細胞を除去する重要な役割を担っているため、その機能低下は感染症やがんのリスク増加につながります。
また、記憶T細胞の形成も阻害され、同じ病原体への再感染時の迅速な免疫反応が損なわれます。この影響は年齢とともに顕著になる傾向があります。

炎症反応の慢性化

慢性的な睡眠不足は、炎症反応の適切な終息を妨げ、慢性炎症状態を引き起こします。通常、急性炎症反応は感染や組織損傷に対する適切な免疫反応ですが、睡眠不足により炎症の収束メカニズムが機能しなくなると、持続的な炎症が生じます。
この慢性炎症は動脈硬化、糖尿病、心血管疾患などの生活習慣病の発症に深く関与しています。慢性炎症の改善には、睡眠の質の向上とともに、適切な生活習慣の維持が重要になります。

まとめ

健康な生活を送るためには、質の高い睡眠を確保することが不可欠です。睡眠は身体と心の回復、自律神経のバランス調整、血圧の適切な管理、免疫機能の維持という多面的な役割を担っています。現代社会では睡眠を軽視しがちですが、睡眠不足や不眠症が引き起こす健康への悪影響は深刻かつ広範囲にわたります。
睡眠不足による影響は、単一の症状として現れるのではなく、自律神経の乱れから始まって高血圧や免疫機能低下へと連鎖的に広がる特徴があります。この相互関係を理解することで、睡眠の重要性をより深く認識することができます。また、これらの影響には個人差があり、年齢、基礎疾患、生活環境によってもその程度は異なることを理解しておくことが重要です。
日々の生活の中で睡眠の質と量を意識的に改善し、必要に応じて専門医との相談も含めた適切な対策を講じることで、より健康で充実した人生を送ることが期待できます。睡眠に関する問題を感じている方は、早期に医療機関を受診し、個々の状況に応じた適切な診断と治療を受けることをおすすめします。

参考文献

厚生労働省:健康づくりのための睡眠指針2014

[国立精神・神経医療研究センター:睡眠障害ガイドライン

日本循環器学会:高血圧治療ガイドライン

配信元: Medical DOC

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