作り置きは気分がのる日にまとめて

ーー買い出しや下ごしらえの工夫は?
毎日スーパーに行くのは面倒なので、空のリュックやトートを持って一気に買い込んで、まとめて5〜6品ほど作ることが多いです。ラジオを聴きながら、だいたい2時間くらいかけて。
ーーすごい!なかなかの作り置き量ですね。
といっても、たいしたことはしていないですよ。日持ちするおかずを何品か作りつつ、きのこをほぐして「いつでも何でも入れられるよパック」を作っておいたり、鮭の切り身を冷凍しておいたり。冷凍庫はいつも充実しています。
お取り寄せも好きで、スープや薄皮の餃子など、「解凍するだけで一品」になるものを常備していますね。ほかにも、肉、野菜、魚…とにかく「スタンバイ食材」をいろいろ揃えておくのが安心。
ーー冷凍庫が頼れる存在になっているんですね。
そうですね。冷凍できない食材や、納豆や豆腐のようなちょっとしたものは、その日にコンビニで買うこともあります。
「料理しなきゃ」と考えると途中で面倒になってくるので、動画を流したり、ワインを片手に気分を変えたりしながら、日々のんびりやっています。料理はだましだましやるくらいが、私にはちょうどいいんです。
「面倒くさがり屋」が自炊を続ける理由

ーー山崎さんはエッセイ『まっすぐ生きてきましたが』の中で、ご自身を「面倒くさがり屋」としています。それでも自炊を続けるのはなぜですか?
毎日きっちりしているわけではありません。夕方に帰れて、気が向いた時だけ。「お腹は空くし、家を出るのは面倒」とか、そんな時に、自分のペースでキッチンに立つ感じです。
ーーペースを保つために意識していることは。
できるだけ効率化したいタイプなので、“手抜き”ではなく“手間抜き”ができるアイテムはとても大事にしています。無印良品のレトルトもよく使いますね。
輪切りにして焼いたなすのフライパンに直接レトルトのカレーを入れて「なすカレー和え」にしたり。レトルトを調味料感覚で使っています。手軽なのにちょっと満足感が出るし、野菜もたくさんとれてヘルシーなんです。
ーーレトルトにちょい足し、ではなく「レトルトをちょい足し」といった感覚ですね。
そうですね。思い返すと、実家では母がよく「クックドゥ」を使っていたんです。子どものころは「なんでだろう?」と思っていたけれど、今は仕事と日々の生活の中で、そのありがたみがすごくわかります。手間は抜きつつ、おいしいものも食べたい。そんな時の心強い味方ですよね。

ーーエッセイでも、料理の「レシピに沿って答えにたどり着く感覚」が好きと綴られていましたね。
「こんな簡単な工程でおいしくなるなんて!」という、アハ体験が好きなんです。「料理酒ってこんなに使えるんだ」とか「みりんを入れるタイミングで味が変わるんだ」とか、どんどんわかってくるのが楽しくて。
料理家の長谷川あかりさんにいろいろ教わったり、有賀薫さんのスープのレシピを倍量で作って、ジップロックに入れて冷凍しておくこともあります。「食卓に温かなスープがあるだけで、幸福度がこんなに違うんだ!」と気づいてからは、スープを常備するようになりました。
ーーそんな山崎さんでも、「今日はもう何も作りたくない」という日もありますか?
ありますよ、もちろん。無心でお酒を飲みながらつまむこともあるし、友達と「しゃぶ葉」に行くこともあるし。「ポテトでしか癒せない!」というレベルで疲れる日もあります。そんな夜は、大量のポテトを前に、ワインやビールを飲むことで「これでよし」と思えるんですよね。
ーー晩酌を楽しまれているんですね。
好きです。家には「おつまみボトル」を常備しています。山椒入りの青豆、さばチップ、ナッツなど、気分でつまめるものを色々と用意しているんですよ。疲れていて「ごはんどころじゃない!」なんて時は、それで済ませる日もあります。
ーー気負わずにおつまみを楽しむ時間があるのは素敵ですね。
あとは、「とにかくお腹を満たして血糖値を上げて寝よう」という日もあります。レトルトのパックごはんに卵を割ってそのままたまごかけごはん。あるいはパスタをゆでて、ソースをかけて終わり、とか。
ーーちゃんと自分をいたわる一食になっている気がします。
毎日、完璧じゃなくていい。「食べることで今日を終わらせる」という行為だけで、自分にとっては十分なんです。
