「手間抜き」を支える調味料とキッチンツール

ーー山崎さんはうまく料理と付き合っていらっしゃいますが、気負わないコツは?
お菓子作りと違って、料理はなんとでもなるんですよね。正確には、なんとかしている、かな。いつも目分量で、感覚的に作っています。
もちろんレシピを見て作ることもありますが、調味料の力を信じています。工程が多少雑でも「塩がおいしいから大丈夫!」って思うことにしているんです。
ーー調味料への信頼が厚いんですね。
そうですね。地方の仕事の時にお土産屋さんでご当地のオリーブオイルを買って帰ったり、イタリアでパスタをまとめて買ってきたり。食材と調味料がちゃんとしていれば、だいたいおいしくなる気がします。
ーー調味料にもこだわりがありそうですが、推しアイテムは?
チューブの生姜とにんにくは常備していますね。スープに少し入れるだけで身体が温まるし、味が締まるんです。
あとは山椒を6種類ほど。風味が変わるので楽しいです。七味をなんでもかける人の感覚で、私はわりと何にでも山椒をかけてみます。中華炒めにも和食にも、納豆にも合うんですよ。
ーー6種も!山椒はそれぞれ、メーカーによる個性が際立ちますよね。山崎さん流の“手間抜き”ツールは何ですか?
ぶんぶんチョッパーは必須です。みじん切りをしたくないんです。あとは電子レンジをフル活用。
それと、きのこの冷凍セットは“神食材”ですね。繊維がいい意味で崩れてクタッとするので、「凍らせたほうがいいのか!」と気づいてから常備しています。カット野菜も使うし、シーフードミックスも常にあります。
ーー道具や器にもこだわりがあるそうですね。
まな板にもなるしプレートにもなるお皿とか、無印良品の「横置きできる ストレーナー付き冷水筒」とか、便利アイテムが好きです。
ーー作り置きや食材の使い方にもコツがありそうです。
唐辛子を使って保存できるようにしたり、食べ切れなかった鍋の残りはスープジャーに入れて仕事現場に持って行ったり。フリーズドライの味噌汁に豆腐を適当に入れて、かさ増しするのも定番です。
ーースーパーでつい買ってしまうものや、「これさえあれば大丈夫」という食材は?
納豆です。大好きで、絶対に切らしたくないですね。お肉や魚でたんぱく質を取ろうと思うとスーパーに行く必要があるけれど、閉店までに間に合わなければ、コンビニでも手軽に買える豆腐と納豆で補おうとしています。
豆腐、納豆、冷凍しているきのことねぎ。この三つがあればなんとでもなります。豆腐の上にひきわり納豆とめかぶ、かつおぶしをのせて食べるとか。
どうしてもがんばれない日だってある

ーー「料理をしない日」も含めて、自炊との付き合い方をどう考えていますか?
決まりごとを作ると性格的に疲れてしまうので、あまり決めていません。
「元気な時しかやらない」「絶対に無理しない」。それがルールです。
どうしても栄養が気になる人には、餃子のお取り寄せは本当におすすめです。「富山の餃子専門店 ミッちゃん餃子」「まさし」「ぎょうざの宝永」など。餃子はお肉と野菜が入っているし、完全食だと思っています。
「野菜とらなきゃ」と思う時は、カルディで買ったライスペーパーを水でふやかして、野菜を巻くんです。ちまちま食べるより、まとめて野菜をとれるので便利だなと思って。「山盛りサラダの太巻き」みたいな感覚で。家にあるピリ辛ソースで味を変えて楽しんでいます。
ーー生春巻きのようにするんですね。たくさんのヒントを、ありがとうございました。
ご家族がいる方は「どうしても料理をしなきゃいけない」タイミングもあると思います。「まずは日々、おつかれさまです」という気持ちです。
私のように一人暮らしの方なら、自由でいい。自分の機嫌を優先して、作って食べたほうがテンションが上がるならそれでいいし、そうでないなら無理に作らなくてもいいと思います。自炊が偉いわけではないので。
ーーそう言ってもらえると、肩の荷が下りる人も多そうです。
私も、コンビニのメンマにハマって、そればかり食べていた時期もあります。「食べても食べなくても合格」。誰かに褒めてもらうのを期待するのではなく、自分で自分にハナマルを押してあげる。
ごほうびごはんは外食でいいし、普段のごはんがおいしかったらそれだけでご機嫌。工程や手間なんて、気にしすぎなくていいと思います。
ーーエッセイにも、そんなごはんの話がよく出てきますよね。
私も、「自炊を続けよう」と思ってやっているわけではないんです。続けようと思うと気合いが必要になってしまうから、「気づいたら続いていた」くらいがちょうどいい。何を食べても、食べなくても、自分がそれで幸せなら合格。それくらい気楽でいいと思います。

