カミーユ・ピサロ《ロンドン、ハイドパーク》1890年 東京富士美術館蔵(展示期間 9/20-10/19)
八木一夫《歩行》1957年 京都国立近代美術館蔵
見どころ①身近な「散歩」を描いた多彩な美術品
黒田清輝《夕の梨畑》1919年 東京国立博物館所蔵 Image:TNM Image Archives
あまりにも身近で、私たちが無意識に行っている「散歩」。本展では、時代やジャンルを超えたさまざまな作品が、「散歩」という切り口で紹介されます。
菊池契月《散策》1934年 京都市美術館蔵(展示期間 9/20-10/19)
たとえば、明治の京都画壇をリードした菊池契月による《散策》。少女と2匹の犬が森の中を散歩する様子にはどこか優しさや温かみがあり、爽やかな新緑の香りとともに癒しを感じられる作品です。
金島桂華《画室の客》1954年 京都市美術館蔵(展示期間 10/21-11/16)
金島桂華《画室の客》は、犬の散歩の途中で画家を訪ねたワンシーンに注目。散歩を中断された犬が何かしでかさないか、心配になりつつも続きが気になる場面です。
東郷青児《超現実派の散歩》1929年 SOMPO 美術館蔵 ©Sompo Museum of Art,25004
また、東郷青児は《超現実派の散歩》で幻想的な散歩を表現。「これも散歩なの?」「どんな景色が見えるんだろう?」といった視点で絵画を見てみると、作品により親しみを感じられるかもしれません。
さらに、「散歩」から「歩行」に視野を広げてみると、また違った景色が見えてきます。たとえば、人々の救済を祈って諸国を巡った、空也、一遍、一向俊聖などの僧侶たち。その姿は、《空也上人立像》などに表されています。
与謝蕪村《松尾芭蕉経行像》江戸時代 逸翁美術館蔵
また、歩くことに専念して身心を整える禅の修行「経行(きんひん)」を扱った作品も。文人画で知られる与謝蕪村の《松尾芭蕉経行像》には、歩行禅とも呼ばれる経行の様子が描かれています。
佐伯祐三《下落合風景》1926年 大阪中之島美術館蔵
「散歩」や「歩くこと」はその身近さゆえか、時代やジャンルを問わずさまざまな作品で描かれてきました。「散歩」を私たちと作品の接点として、作中の人々の気持ちを想像しながら鑑賞してみてはいかがでしょうか。
見どころ②重要文化財と滋賀の地が誇る文化財でたどる「散歩」
本展では、重要文化財2作品、滋賀県指定有形文化財1作品、大阪市指定有形文化財2作品を含む74作品が展示(一部展示替えあり)。「おさんぽ」という親しみやすいテーマを通して、地域を象徴する文化財に深く触れられる機会となります。
重要文化財《空也上人立像》鎌倉時代 滋賀・荘厳寺蔵(滋賀県立琵琶湖文化館寄託)
たとえば、重要文化財に指定されている《空也上人立像》は滋賀県近江八幡市の荘厳寺に、滋賀県指定有形文化財の《一向上人像》は米原市の蓮華寺に、《一遍上人像・六字名号》は長浜市の浄信寺に伝わっている作品です。
空也、一遍、一向は、人々の救済のために諸国を巡り歩いた遊行の聖として知られています。いわゆる「散歩」とは異なる歩行のあり方ですが、彼らの姿が人々の信仰を集めてきたことを伝えるべく、本展で作品が展示されます。
