帰省するたびにマウントをとってくる友人・アケミを避け始めた主人公・ひなこ。しかし夫と帰郷すると、アケミはなんと実家に電話してきて…。
逃げられない!
お盆休みに入って数日経った頃、思いがけないできごとが起こりました。私の実家に、突然アケミから電話がかかってきたのです。その日の夕方、私と和也は両親と一緒に縁側で涼んでいました。私の母が電話を取り、驚いた表情で私に受話器を渡しました。
「ひなこ、アケミちゃんからよ。旦那さんも一緒に、今から会いたいって言ってるんだけど…」
私は嫌な予感がしました。しかし、すでに両親が話を聞いてしまっている手前、断るわけにもいきません。
「ひなこ、今、実家にいるんでしょ?聞いたよ、旦那さんも一緒に帰ってきてるって」
「なんで実家に電話したの?」
「ひなこがスマホの連絡無視するから!忙しいって言ってたけど帰ってきて家にいるんじゃん」
電話越しのアケミは、どこか責めるような口調でした。それだけでうんざりです。アケミはきっと、近所の誰かから私たちが帰省したと聞いたのでしょう。田舎のネットワークは恐ろしいほどに強固です。
「そうなの、今回は旦那も来てるから家でゆっくりしとこうと思ってて」
私は正直に答えました。もう逃げ場はありませんでした。
「そうなの。私、ひなこの旦那さんに一度会ってみたいのよね。さっきひなこのママもいいって言ってたし、今から顔出すね」
あまりの押しに負けて和也に相談すると、彼は少し考えつつ「まあいいんじゃない?」と言いました。彼の言葉に背中を押され、私はアケミに「わかった」と返事をしました。
意外なつながり
それから数十分後、アケミは夫を連れて、私の実家にやってきました。初めて会うアケミの夫は、写真で見るよりも優しそうな雰囲気の人でした。そして、アケミはいつものように、私の前で得意げな表情を見せていました。
彼女の顔には「私、こんなに素敵な人と結婚したの」とでも書かれているかのようでした。彼女の手には、有名パティスリーの高級そうなケーキの箱が握られていました。和也もまた、アケミの夫と初対面のはずなのに、なぜかとても驚いた顔をしていました。
「…もしかして、A大学の医学部にいた、森井くん?」
和也は、アケミの夫の名前を正確に呼びました。アケミの夫も、同じように驚いた表情で和也を見つめました。
「ああ、やっぱり!和也くん?こんなところで会うなんてすごいな」
当然初対面だと思っていた夫同士が、まるで旧友のように再会を喜び合っていました。どうやら2人は大学の同級生だったようです。2人は大学時代、同じサークルに所属していたそうで、互いの近況を語り合い、楽しそうに笑い合っていました。
「和也くんは今、何してる?昔よりもちょっと貫禄が出たみたいに見えるけど」
アケミの夫はそう言って、和也に尋ねました。それにはマウントの雰囲気もなく、純粋に再会を喜んでいるようでした。すると、和也はさらりとこう答えました。
「僕は今、会社役員をやってるよ。森井君こそ医者になったって聞いてたけど、今はどうしてる?大学病院勤務だって妻から聞いてたよ」
アケミの夫は、「ああ、まあ、それなりにね」と笑っていました。その言葉を聞いたアケミは、隣で固まっていました。アケミは何も知らずに会社役員の夫を小馬鹿にするような発言を繰り返していたことに、やっと気づいたのでしょう。

