東京都文京区のマッサージ店で、タイ人の少女(当時12歳)を働かせていたとして、経営者の男性(52歳)が労働基準法違反の疑いで警視庁に逮捕された。少女は「性的サービス」を強要されていたといい、SNSなどで「サービスを受けた客も逮捕すべき」という声があがっている。
●「性的サービス」強要された少女
警視庁によると、経営者の男性は今年6月28日ころから7月29日ころまで、文京区湯島の個室マッサージ店で少女をマッサージなどをさせるなどの接客に従事させ、労働者として使用した疑い。
朝日新聞によると、少女は「性的サービス」も強要させられ、この間に約60人もの男性客の相手をしていたという。
少女はタイ人の母親から日本に連れて来られて、この店に置き去りにされたという。NHKによると、警視庁は児童福祉法違反の疑いで、母親に逮捕状をとったという。
この少女は、いわゆる「人身取引」(性的サービスや労働の強要)の被害者とみられる。もしも、店の経営者や母親が「人身取引」に関わっていた場合、どのような罪に問われるのだろうか。
また、相手が12歳であることがわかっていながら、性的サービスをしてもらった客は罪に問われる可能性はないのだろうか。寺岡慎太郎弁護士に聞いた。
●「人身売買罪」が成立する可能性がある
──経営者は労働基準法違反で逮捕されましたが、今回は「人身取引」のような事件です。今後、別の罪に問われる可能性はありますか。
「人身売買罪」が成立する可能性はあると思います。刑法で次のように定められています。
刑法226条の2 人を買い受けた者は、3月以上5年以下の拘禁刑に処する。
2 未成年者を買い受けた者は、3月以上7年以下の拘禁刑に処する。
3 営利、わいせつ、結婚又は生命若しくは身体に対する加害の目的で、人を買い受けた者は、1年以上10年以下の拘禁刑に処する。
4 人を売り渡した者も、前項と同様とする。
5 所在国外に移送する目的で、人を売買した者は、2年以上の有期拘禁刑に処する。
この犯罪は、外国人が人身売買によって日本に連れてこられたようなケースを対象にした規定です。
もしも経営者の男性がお金を払って母親から少女を「買い受け」、自己の事実的支配下に置いていた場合、「2項」が成立します。また、母親がお金をもらって「売り渡し」ていた場合には、「4項」が成立します。
そのほか「児童買春防止法違反」(児童買春あっせん罪)や「児童福祉法違反」などに問われる可能性もあるでしょう。(上記のように、警視庁は母親について児童福祉法違反の疑いで逮捕状をとったと報じられている)

