博物館の狙いと少数派の賛同意見
公式によると、この改修は「東京国立博物館2038ビジョン」の一環で、「誰もが快適に利用できる開かれた空間」を創出し、「みんなが来たくなる博物館」を目指すとしています。
一つ目は、バリアフリー化と多目的利用。池を芝生化することで、車椅子利用者や高齢者など、多様な層のアクセシビリティが向上するという実利的なメリットは確かに存在します。
二つ目は、「新しい魅力の発信」。オープンスペースでのイベント開催は、これまで博物館に縁遠かった層を取り込み、観光資源としての価値を高めるというポジティブな側面も指摘されています。
この議論が教えてくれること
今回の東博リニューアル論争は、「歴史的景観の情緒的な価値」と「現代のアクセシビリティ・実用性」という、相反する価値観の衝突を象徴しています。
博物館側は「開かれた空間」を掲げていますが、その実現のために長年愛されてきた「静」の景観を破壊することへの説明責任が求められています。特に池が本館と同じくらいの年代物であるという指摘もある中、「なぜ池の維持・改善ではなく、撤去という極端な選択に至ったのか」というユーザーの根本的な疑問に、真摯に向き合ってほしいです。
この論争の行方は、日本における「文化遺産の保全」と「現代的な活用」のバランスを問う、重要な試金石となるのではないでしょうか。
(LASISA編集部)

