■いじめやパワハラの実態をヒアリングすると、見苦しい言い訳が続々と…

尾持さんが所属する部署の課長や取り巻き、そして歳の差30歳の上司の部下たちはおもしろがって、嫌田さんと付き合うことを強要。社長までもが、断るなら「クビ」と脅してきた。憧れの業種に就職できた尾持さんは、「この業界では転職できないようにしてやる」という嫌田さんの言葉に逆らうことができず、止む無く連絡先を交換。すると、嫌田さんから四六時中メッセージが届き、返信しないと永遠に終わらないループにおちいった。精神的にも極限だったとき、嫌田さんに無理やり家に連れ込まれそうになり、あまりの恐怖に退職することを決意した。

社長に退職の意向を示し、セクハラ・パワハラの実態を伝えると社員たちの態度は一変。ヒアリングでは、「嫌田さんが可哀想で彼女作りに協力した」「尾持さんに彼氏を作ってほしかった」などと述べた。尾持さんと嫌田さんが接点を持つには、事務課の協力が不可欠。社内ぐるみで二人をくっつけようとした経緯についても「悪気はなかった」と謝罪した。

しかし、実態は「嫌田さんと二人きりでいるところやデートへ行くところを隠し撮りして、その隠し撮りを社員数人で見てクスクス笑ってきたり…、私と嫌田さんが『どこまでやった』などの嘘のうわさを流して楽しんでいました。仕事の話を無視するなどの業務に直接支障が出るようないじめはなかったのですが、仕事と関係ないところでこういったいじめがありました。思い出すだけで胃が痛いです…」と、尾持さんは語る。

いじめやパワハラにあったことについて、「許せない!という怒りの方が大きかったですが、少しだけ切なさもありました。入社当時は『辞めないでずっとこの会社で頑張ろう!』と考えていたので、会議室に居て、こんなことになっている自分と入社当時の自分を比べて、少し悲しかったです」と、当時の心境を振り返る。

尾持さんが退職をためらった一番のネックは、「会社を訴えれば、同じ業界で再就職するのは難しくなる」ということだった。「努力して入った業界なので葛藤は大きかったし、こんなことになって悔しかったです…。どんな業界でも、仕事のためにこういうことに耐えて業界に残り続けている人もいると聞いたことがあったので、苦しくても残り続ける選択があったのかもしれない。でも、私には多分耐えれなかっただろうし、これでよかっただろうな…と当時は考えました。今でもこれが正解だったのかなと、時々考えることがあります」(尾持さん)

「本来、職場いじめは上司か上層部に相談すべきです。何らかの対策(注意や異動とか)をしてくれるかもしれません。でも、この漫画のように、周囲も頼りにならないとわかったら、労基、弁護士、場合によっては警察など…早めに会社の外に頼ってほしいです。もちろんそうなったら大体は辞めることになるので、まず『辞めてもいい』という覚悟をしてください。私のように『せっかく苦労してやっと入れた会社だから…』と退職を渋ってしまう気持ちもわかるし、そんな人も多いと思います。でも、辞めても条件にこだわらなければ、いくらでも会社はあるんです。ここを辞めたらどこでも働けないかもしれない。辞めたら生活できないかもしれない…、辞めたら相手の思うつぼだ、辞めたら負けだ…、などと考えてしまうかもしれませんが、その考えを捨ててほしいです。転職活動は大変ですが、いじめに耐えるほうがもっと大変だ。と思ったら即行動してほしいです。病む前に即辞める、いじめなんて乗り越えなくていいから逃げる。それでいいと思います」と、尾持さんは熱く語る。

退職後、尾持さんは弁護士事務所に向かい、会社に対して訴訟を起こした。一か月足らずで示談は成立。しかし、本質は変わらない。あの会社ではまた、尾持さんの変わりに新人社員がターゲットになっていくのだ。
取材協力:尾持トモ(@o0omotitomo0o)
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