●妻の自宅に侵入した男性はなぜ暴行罪で起訴された?
本件で、妻の自宅に侵入した男性は不同意性交罪の未遂で逮捕されましたが、暴行罪で起訴されたそうです。
これは、男性が被害者(妻)の住所などの情報を出会い系サイトで見た、と供述していることと関係していると考えられます。
男性が、被害者(妻)が自らの意思でわいせつな行為をさせてくれると誤信していた場合、犯罪の故意がないため不同意性交罪が成立しない可能性があるからです。
●夫の行為は不同意性交罪の間接正犯や教唆などにあたるのか
今回は、夫の投稿を見た男性が、実際に妻の自宅に侵入し、不同意性交未遂の疑いで逮捕(のちに住居侵入と暴行罪で起訴)されています。
この点から、夫の行為は名誉毀損罪だけでなく、男性が犯罪を実行するように仕向けたことで、不同意性交罪(刑法第177条)の間接正犯(未遂)や教唆犯(刑法61条1項)などにも問われる可能性があります。
夫の投稿は、被害者の具体的な住所を示したうえで、「合言葉を言えば、わいせつ行為ができる」という、わいせつ行為を具体的に誘いかける内容だったようです。
この投稿により、男性が本当にわいせつ行為を(同意の上で)できると誤信して行為に及んでいた場合には間接正犯(未遂)が、男性が真実は妻の同意がないという事情を認識しつつ不同意性交などの実行を決意したのであれば、教唆犯が成立する可能性があります。
なお、実行犯が不同意性交未遂罪ではなく暴行罪で起訴されたとしても、夫の間接正犯や教唆犯の成立に直ちに影響するわけではありません。
夫が投稿により、わいせつな行為をするよう決意させ、その実行に着手させたという事実があれば、結果的に実行者である男性が暴行で起訴されているとしても、間接正犯(未遂)や教唆犯が成立する可能性はあります。

