90歳で一人暮らしの母親。
体力は元気だが、記憶力の衰えや金銭管理の不安、部屋の散らかりなど、生活の自立に黄信号が灯り始めている。
こうした状況で「要介護認定を受けてほしい」と願う子世代にとって、「他人を家に入れたくない」「デイサービスなんて子供の遊び」といった親の拒否反応は、決して珍しいものではありません。
本コラムでは、親を説得するための考え方や具体的なアプローチ、実際の事例を交えて、悩める50代以上の方に向けたヒントをお届けします。
1. 高齢者が介護認定やサービスを拒む理由

まず、なぜ多くの高齢者が介護認定や介護サービスの利用に抵抗を示すのでしょうか。
(1)「自分はまだ大丈夫」意識
長年自立してきた自負やプライドが強く、「世話になるのはまだ早い」と感じがちです。
(2)他人を家に入れる抵抗感
自宅が唯一の安心できる場所であり、プライバシーを守りたい思いが強い。
(3)介護サービスへの誤解や偏見
「デイサービスは子供の遊び」「ヘルパーは弱った人のためのもの」といった先入観が根強い。
(4)認知機能の低下による判断力の変化
新しいことへの適応が難しくなり、変化そのものに不安や恐怖を感じやすい。
2. 説得のための心構え
親の拒否に直面したとき、まず大切なのは「本人の気持ちを尊重し、焦らず寄り添う姿勢」です。
説得のゴールは「親を言い負かすこと」ではなく、「親が納得し、自分の人生の選択肢として介護サービスを受け入れること」。
そのために、以下の心構えを持ちましょう。
・いきなり「認定を受けて」と迫らない
・親の不安やプライドを否定せず、共感する
・「あなたのため」ではなく「家族の安心のため」と伝える
・小さな変化や困りごとから話題を広げる

