3. 実際の説得アプローチと事例

(1)【アプローチ1】「困りごと」をきっかけにする
「最近、お金の管理が大変そうだね」「部屋の片付け、一緒にやろうか?」と、日常の困りごとを話題にします。
「実は、こういうときに手伝ってくれる仕組みがあるんだよ」と、介護サービスを“困りごと解決の手段”として紹介します。
事例
80代女性Cさんは、金銭管理が不安定になり、娘が「お金のことで困ったら、専門の人に相談できる制度があるらしいよ」と声をかけました。
最初は拒否していたCさんも、「お金のことなら」と地域包括支援センターの職員と面談。
そこから自然に介護認定の話題が広がり、申請に至りました。
(2)【アプローチ2】「家族の安心」を理由にする
「お母さんが元気でも、私が心配で夜眠れないの。
万が一のときに備えて、制度だけでも使わせてほしい」と、“親のため”ではなく“家族の安心”を前面に出します。
事例
90歳男性Dさんは「ヘルパーなんていらん」と頑なでしたが、息子が「自分が仕事で出張が多く、何かあったときにすぐ駆けつけられない。
せめて見守りや緊急連絡の仕組みだけでも使わせて」と頼み、要支援認定を申請。
結果的に、週1回のヘルパー利用から徐々にサービス拡大へつながりました。
(3)【アプローチ3】「体験から始める」
「デイサービスは子供の遊び」と思い込んでいる場合、「1日だけ体験してみない?」とお試し利用を提案。
体験後に「意外と楽しかった」「昔の友達に会えた」と前向きになるケースも多いです。
事例
認知症初期の女性Eさんは、デイサービスに強い抵抗感を持っていました。
娘が「友達が通っているから一緒に行ってみよう」と誘い、1日体験を実施。
手芸や歌のプログラムが楽しく、「また行ってもいいかも」と気持ちが変化しました。
(4)【アプローチ4】「専門家の第三者的な助言を活用」
家族の言葉には耳を貸さなくても、専門家や地域包括支援センターの職員、かかりつけ医からの助言には納得することがあります。
まずは家族が地域包括支援センターに相談し、家庭訪問や面談の機会を設けてもらうのも有効です。
4. 説得のための具体的なステップ
・情報収集と相談
まずは地域包括支援センターや役所の高齢者福祉窓口に相談し、親の状態や利用可能なサービスについて情報を集めましょう。
・親の「困りごとリスト」を作る
日常生活で親が困っていること、家族が心配していることを書き出し、本人にも「どれが一番困る?」と聞いてみます。
・小さなサービスから提案
いきなり「ヘルパー」「デイサービス」ではなく、例えば「ゴミ出しだけ」「お薬の管理だけ」など、限定的な支援から始める提案をします。
・体験利用を促す
「1回だけ」「見学だけでも」とハードルを下げて体験利用を勧めます。
・第三者の力を借りる
地域包括支援センターの職員やケアマネジャー、かかりつけ医の家庭訪問を依頼し、専門家の立場から助言してもらいます。
・親の気持ちを尊重し続ける
無理強いせず、親のペースで少しずつ進めることが大切です。

