展覧会ディレクター、川上典李子と田代かおるによるメッセージ
アキッレ&ピエル=ジャコモ・カスティリオーニ「Taccia(タッチア)」(1962年デザイン)
それぞれが異なる原動力と哲学をもとに、戦後のヨーロッパで独自の道を切りひらいた6名の巨匠たち。展覧会ディレクターを務める川上典李子と田代かおるは、6名の巨匠たちを招聘した理由として以下のようなメッセージを発しています。
ではなぜ、仕事の手法や生き方も異なる「先生」6名を、同じステージに招聘したのかと言えば、そこに共通する軸を見たからでした。商業主義を優先した「かたち」ではなく、ヒューマニティを中心に置き、さらには環境までとらえる営みとしてプロジェクトを行なっていたという軸です。
また「先生」たちが、自身の職能についてドイツ語ではゲシュタルター(Gestalter)のほか、エントヴェルファー(Entwerfer)を、イタリア語ではプロジェッティスタ(progettista)を使用していたことにも注目します。
それは「構想者。設計者。プロジェクトする者。」にあたる言葉で、デザインをより統合的な営みとしてとらえていたことを示しています。本展では、これからの私たちの指針ともなるプロジェクトを改めて展示し、彼らの残した力強い言葉に耳を傾けます。』
※ディレクターズ・メッセージより引用
オトル・アイヒャーに関する未公開映像も!本展の見どころ紹介
アキッレ&ピエル=ジャコモ・カスティリオーニ「Arco(アルコ)」(1962年デザイン)
ブルーノ・ムナーリ、マックス・ビル、アキッレ・カスティリオーニ、オトル・アイヒャー、エンツォ・マーリ、ディーター・ラムス。6名それぞれの仕事や制作プロセスをはじめ、当時の写真や映像、本人たちの言葉を通して、その思考と創造の源泉に迫ります。
映像ディレクター・菱川勢一(DRAWING AND MANUAL)による映像インスタレーションでは、6名のデザイナーの言葉と活動を本人の映像を通して紹介。武蔵野美術大学 基礎デザイン学科の協力のもと、展覧会ディレクターと菱川が本展の視点からセレクトした、オトル・アイヒャーに関する未公開映像も見どころのひとつです。
エンツォ・マーリ「Samosシリーズ『磁器のデザイン G』」(1973年) 撮影:エス・アンド・ティ フォト ©2022
また6名の代表作をはじめとするプロダクトや作品、活動を展示。ムナーリ、カスティリオーニ、マーリが関わったイタリア・モダンデザインの象徴的ブランド「DANESE(ダネーゼ)」の創業理念を紹介します。
さらに、ビルとアイヒャーの功績を語る上で欠かせないドイツ・ウルム造形大学、そして同大学に学び、日本のデザイン教育の礎を築いた向井周太郎の歩みにも焦点を当てます。
そのほか、深澤直人、金井政明、向井知子ら、第一線で活躍するクリエイターたちが語る撮り下ろしインタビュー映像を展示。日本との繋がりについて触れながら、デザインの先生たちの思想が今、そしてこれからの時代にどう生きていくのかを掘り下げます。
先人たちの軌跡を見つめ直し、これからの未来を考える
ディーター・ラムス「SK 4」(ハンス・グジェロとの共同デザイン、1956年デザイン) Andreas Kugel ©rams foundation
考え、つくり、伝えつづけるというデザインの行為は、生きることと切り離すことができません。ここで紹介する6名のデザイナーたちの作品や言葉、活動に触れるとき、彼らは皆、私たち一人ひとりに考え、主体的に行動することを促していたのだと気づかされます。
いま、社会が大きく変化する時代にあって、デザインには新たな「問い」を生み出す力が求められています。だからこそ、先人たちの軌跡をあらためて見つめ直し、その思想や情熱を手がかりに、これからの未来をどう探り、社会に対してどのようなメッセージを投げかけていけるのか。そのことについて考えながら、本展にて魅力に満ちた6名の先生たちと出会ってください。
