悪性リンパ腫は白血球の中のリンパ球ががん化して発症する病気です。悪性リンパ腫が発症する原因は明確にはわかっていません。
しかし、一部の悪性リンパ腫は、特定のウイルスや細菌に感染することで発症リスクが高まることが明らかになってきました。また、遺伝子に異常が起こることで発症リスクが高まる悪性リンパ腫もあります。
発症リスクを高める原因を知ることで、これらに由来する悪性リンパ腫の発症リスクを下げることにつながるでしょう。
今回は悪性リンパ腫の原因・症状について解説します。
※この記事はMedical DOCにて『「悪性リンパ腫の原因」はご存知ですか?症状や治療法も解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。
悪性リンパ腫とは?
悪性リンパ腫とは、血液細胞のリンパ球ががん化して発症する病気です。
血液中には様々な血液成分が含まれています。酸素を運ぶ赤血球・止血作用を持つ血小板・免疫を司る白血球などです。このうち、リンパ球は白血球の一種類に分類されます。
血液細胞を作り出すのは骨髄の中にある造血幹細胞です。造血幹細胞は骨髄系幹細胞とリンパ系幹細胞に分かれます。
2つの幹細胞のうち、リンパ球を作り出すのはリンパ系幹細胞です。リンパ系幹細胞から分化して作り出されたリンパ球は、その細胞の性質の違いによって、B細胞・T細胞・NK細胞の3種類に分けられます。
悪性リンパ腫の種類も細胞の性質の違いによって、大きく3種類に分けられます。
B細胞リンパ腫
T/NK細胞リンパ腫
ホジキンリンパ腫
悪性リンパ腫の種類は、細かく分けると50種類以上と非常に多いため、「ホジキンリンパ腫」「非ホジキンリンパ腫」の2種類に分けられるのが一般的です。
日本人にみられる悪性リンパ腫の多くが非ホジキンリンパ腫で、全体の90%以上を占めています。「ホジキン細胞」や「リード・シュテルンベルグ細胞」といった大型の細胞が特徴的なホジキンリンパ腫は、悪性リンパ腫全体の5%程度で、日本人にはあまり多くみられません。
悪性リンパ腫を発症する原因は、はっきりとわかっていません。しかし、一部の悪性リンパ腫はウイルスや細菌感染・遺伝子の異常が原因とされています。
悪性リンパ腫の代表的な症状として、首・脇の下・足の付け根などに現れる、無痛性のしこりがあります。痛みがないしこりが現れ、徐々に大きくなっていくことが特徴です。時間が経ってもしこりがなくなることはありません。
悪性リンパ腫の治療は細胞の種類と病期(ステージ)によって変わります。治療を行う上で、悪性リンパ腫の種類と病期の進行具合を正確に判断することが非常に重要です。
悪性リンパ腫の種類の判断には生検検査が必須です。また、病期の判断にはPET-CTを用いた「Lugano分類」にて判定されます。
悪性リンパ腫の原因
悪性リンパ腫を発症する原因については、まだはっきりとはわかっていません。
しかし、一部の悪性リンパ腫はウイルスや細菌の感染・遺伝子の異常によって発症することがわかってきました。ここでは判明している悪性リンパ腫の発症原因について説明します。
ウイルス・細菌感染による炎症
一部の悪性リンパ腫の発症原因として、HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)などのウイルスや、ピロリ菌などの細菌の感染が挙げられます。
HTLV-1は、「成人T細胞白血病リンパ腫」という悪性リンパ腫の原因となるウイルスです。リンパ球の一つであるT細胞にHTLV-1が感染してがん化することで、ATL細胞というがん細胞になり、増殖することで発症します。HTLV-1の主な感染経路は、赤ちゃんのときに母親の母乳から感染する「母子感染」とされています。
悪性リンパ腫の原因とされる代表的な細菌が「ヘリコバクター・ピロリ菌」です。ヘリコバクター・ピロリ菌の影響で発症するとされる悪性リンパ腫には、「胃MALTリンパ腫」があります。
体内に侵襲したヘリコバクター・ピロリ菌が住み着くのは胃です。胃の粘膜に住み着いたヘリコバクター・ピロリ菌は、様々な酵素を分泌して胃の粘膜を傷つけ、炎症を引き起こします。
この炎症の影響によって発症するのが胃MALTリンパ腫です。胃に限局した早期の胃MALTリンパ腫では、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌が治療の中心となります。
このように、一部の悪性リンパ腫の発症には、ウイルスや細菌の感染が関係しています。これらのウイルスや細菌の感染により、必ずしも悪性リンパ腫を発症するわけではありませんが、発症リスクは高まるといえるでしょう。
定期的な経過観察や除菌治療を受けるなどして、悪性リンパ腫の発症リスクを減らすように心がけましょう。
遺伝子の異常
リンパ系幹細胞からリンパ球へと分化する過程において、何らかの原因で遺伝子が傷つき、異常が起こることで悪性リンパ腫が発症する可能性があるとされています。遺伝子の異常が起こる原因は様々です。
加齢
化学物質
活性酸素
放射線
悪性リンパ腫の発症ピークが70歳代ということからもわかる通り、加齢は遺伝子の異常を引き起こす大きな要因となります。このほか、化学物質の暴露・活性酸素の増加・放射線なども遺伝子異常を引き起こす要因です。

