「しっかり眠ったはずなのに眠くて仕方がない」「強い眠気で仕事に集中できない」などの、強い眠気に悩まされた経験は、多くの人にあるのではないでしょうか。
もし時間も場所も関係なく1日に何度も強い眠気に襲われる場合は、ナルコレプシーかもしれません。
眠ってはいけない場面で居眠りをすれば「怠け者」「不真面目だ」と理解をされにくく、どうしたらよいのか悩んでいる方もいるでしょう。
この記事ではナルコレプシーの理解を深め対策がとれるよう詳しく解説をします。

監修医師:
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)
精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。
保有免許・資格
医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医
ナルコレプシーの原因と症状

ナルコレプシーはどのような病気ですか?
ナルコレプシーとは強烈な眠気が日中でも繰り返し襲ってくる睡眠障害です。急な眠気による居眠りは運転中の事故の危険や会議中の居眠りで信用をなくすなど社会生活を脅かす要因にもなり危険です。特に感情が動いたときに力が抜けて倒れてしまう情動性脱力発作(カタプレキシー)を伴うタイプは、怪我の危険性もあります。好発年齢は10〜20代と若年層で多く、特に14〜16歳に集中しています。また、世界で2000人に1人・日本では600人に1人の割合で稀な疾患なので難病に該当しますが指定難病ではないので医療費助成の対象ではありません。
ナルコレプシーの原因は何ですか?
現在でも明確な原因は判明していないものの、有力な3つの説が解明されています。オレキシン欠乏
自己免疫によるオレキシンの破壊
白血球の型(HLA)の関連性
通常脳の視床下部には覚醒を保つために必要な細胞間をつなぐ信号伝達分子のオレキシンが存在しますが、ほとんどのナルコレプシーの患者さんにはオレキシンが欠乏しているのが特徴です。また、2009年にヨーロッパで使用されたブタインフルエンザワクチン接種後にナルコレプシーの患者さんが急増したことで自己免疫との関連性も注目されました。未解明の部分も残されているものの、自己免疫の過剰な反応により自身のオレキシン細胞を破壊した可能性が考えられナルコプレシーと自己免疫との関連性が有力視され現在も研究が続いています。また、ナルコレプシー患者さんの白血球の型(HLA)遺伝子が特定の型をもつことから、遺伝要因の関与が疑われました。そこで遺伝要因の調査もなされましたが、現時点では遺伝要因の関連性は考えにくいとされています。むしろ、後天的な要因や環境によるものの方が関連性が高く、原因にはいまだ不明瞭な部分があるのが現実です。
ナルコレプシーの主な症状を教えてください。
ナルコレプシーの主な症状は次の4つです。睡眠発作
情動脱力発作(カタプレキシー)
入眠時幻覚
睡眠麻痺(金縛り)
睡眠発作は場所や時間に関係なく強烈な眠気が何度も起こります。居眠りは短時間でスッキリするのも特徴で症状は3ヶ月以上続きます。睡眠発作に加え情動脱力発作はナルコレプシー患者さんの特有の発作で、喜怒哀楽などの感情の変化がトリガーとなり力が抜けて倒れてしまうため怪我に注意が必要です。また、覚醒と睡眠の境界で幻覚をみる症状を入眠時幻覚とされ、夢を見ている状態に近く夢現実が分からなくなってしまいます。そして、眠っているときに身体が動かなくなるものを睡眠麻痺と呼ばれ金縛りと聞けばなじみがあるかもしれません。
ナルコレプシーの診断

受診目安と診療科を教えてください。
睡眠障害は理解されにくく、自分でも病気と気付かないことがあります。病気に気付かず放置をしてしまうと事故や怪我などの取り返しのつかない事態を起こすかもしれません。ナルコレプシーの症状がすべて現れるとは限らないので、ひとつでも疑わしい症状があれば睡眠専門外来や精神科の受診で解決するでしょう。
問診では何を聞かれますか?
検査の前に普段の睡眠状況や関連している原因をさぐるために行います。症状が現れた日や睡眠に関わる詳細な日常生活の質問をはじめ、持病や常備薬なども関連している可能性があるため詳しい問診が行われます。
ナルコレプシーの診断方法を教えてください。
ナルコレプシーは情動脱力発作の有無で2つに分類され、さらに診断には睡眠発作があることと、MSLT検査法を使用した次の基準を満たすことが必要です。床について眠るまでの時間が8分以下
入眠後15分以内でのレム睡眠の出現を2回確認
MSLT検査法は睡眠時の脳波を測定する睡眠ポリグラフ検査と、睡眠に入るまでの時間を測定する反復睡眠潜時検査を使用して判断します。
ナルコレプシーと似ている病気はありますか?
特発性過眠症ナルコプレシーは中枢性過眠症に分類されます。中枢性過眠症に分類される次の疾患も似たような症状が起こるため間違えやすいので注意しましょう。
特発性過眠症
クライネ-レビン症候群(反復性過眠症・周期性傾眠症)
睡眠不足症候群
特発性過眠症で起こる強烈な眠気は、ナルコプレシーよりやや軽めですがよく似ています。長時間型・非長時間型があり、長期型では居眠りの時間が長いことで区別がつきやすいのに対し、非長時間型では短時間の居眠りを繰り返すため区別がつきにくいのが特徴です。また、自律神経系からくる失神などもナルコプレシーの情動脱力発作と間違えやすく見落とす可能性があるかもしれません。クライネ-レビン症候群は強い眠気でほぼ1日中眠り続ける状態が数日〜数週間続き、年に数回繰り返すことから反復性過眠症とも呼ばれています。長時間の睡眠で夢と現実が混同し抑うつ症状を引き起こすこともあります。そして、日中の強い眠気の大半を占める原因は慢性的な睡眠不足です。生活改善を行い原因を取り除くと症状が出現しなくなります。

