父親としても、ありえない
怒り、怒り、怒り―――。沸騰したような怒りが、私の血管を駆け巡る。
和人がこんな状態なのに、父親としての心配や責任感なんて微塵もない。彼の頭の中にあるのは、明日会うマイとの夜の想像だけ。和人の苦しみを無視して、そんなことでニヤニヤできる神経が信じられない。私にとって、不貞よりもこのことが離婚の決意を固くした。
「浮気したら別れる」は、私と実の約束だけど「子どもの病気を無視して不倫する」だなんて、そもそも父親と子の間の絶対的な裏切りだ。
夜、和人をなんとか寝かせて夫も寝入ったのを確認すると、私はクローゼットに隠しておいた小さな箱に手をかける。中にあるのはボイスレコーダーだ。昨日のメールを見てすぐに、翌日配送で注文しておき、昼間に受け取っておいた。
(これもう逃げられないね)
声に出さず、レコーダーに語りかける。それは私と夫、そしてレコーダーという「沈黙の証人」だけの秘密だ。私はレコーダーを、夫のデイバックの中に仕掛けた。最後に電池式のレコーダーがきちんと作動しているか確認し、そっとチャックを閉めた。
これで準備は整った。 明日、私は裏切りの証拠を手に入れるだろう―――。
あとがき:「父親失格」が招く不可逆な決断
「浮気」は夫婦間の約束破りですが、「子どもの病気を無視して不倫にうつつを抜かす」行為は、さくらにとって許しがたい「父親と子の間の裏切り」でした。
これにより、さくらの離婚は感情論ではなく、和人を守るための正当な判断となります。用意されたボイスレコーダーは、さくらの復讐心を象徴する冷たい道具です。彼女は感情を排し、この機械に「裏切りの証拠」を記録させ、逃げ場のない状況を自ら作り出しました。
※このお話は、ママリに寄せられた体験談をもとに編集部が再構成しています。個人が特定されないよう、内容や表現を変更・編集しています
記事作成: ゆずプー
(配信元: ママリ)

