
「なんとなくクッションを当てている」
「忙しくて、つい横向きに寝かせっぱなし」
そんなポジショニングしていませんか?
ポジショニングは、単に“楽な姿勢に寝かせる技術”ではありません。
褥瘡や拘縮の予防、呼吸・嚥下の安定、夜間の安眠を守るための大事なケアのひとつです。
でも現場では、「教わったことがない」「自己流でやっている」「本当にこれで合っているのか不安」という声も少なくありません。
このコラムでは、ポジショニングを怠る弊害と、具体的なコツを紹介します。
なんとなくのケアを“根拠のあるケア”に変えましょう。
ポジショニングを怠る弊害

最初に、ポジショニングを怠ることで起きる弊害について解説します。
●褥瘡・皮膚裂傷のリスクが上がる
●拘縮・関節変形が進行する
●不眠・意欲低下につながる
●ケアがやりにくくなる
●褥瘡・皮膚裂傷のリスクが上がる
長時間同じ姿勢でいると、身体の一部に圧力が集中し、血流が悪化します。
これにより皮膚や組織が壊死しやすくなり、褥瘡や皮膚裂傷のリスクが高まります。
特に骨が突出している部位は要注意。
適切なポジショニングで体圧を分散させることは、こうした皮膚トラブルを未然に防ぐ基本のケアです。
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●拘縮・関節変形が進行する
長期間にわたり同じ姿勢で過ごすと、関節や筋肉が固定された状態が続き、可動域が狭くなっていきます。
これが「拘縮」や「関節変形」の進行につながります。
とくに麻痺や筋力低下のある利用者は、日常的な体位変換やポジショニングを怠ると、関節が固まりやすいです。
関節の動きを保つ姿勢づくりや、筋肉に無理のない支持を意識することで、拘縮の進行を防ぎ、動きやすい身体を維持できます。
●不眠・意欲低下につながる
ポジショニングを怠ると、身体に不快感や痛みが生じ、睡眠の質が低下します。
また、圧迫感や姿勢の不安定さによる不安感も、心身の緊張を高め、不眠の原因になります。
睡眠不足が続くと、日中の意欲や活動性も下がり、QOL(生活の質)の低下します。
心地よく安定した姿勢を整えることは、利用者の「眠り」や「前向きな気持ち」を支える大切なケアのひとつです。
睡眠の“見える化”で最適な姿勢調整:眠りSCAN×ICT連携の実践
●ケアがやりにくくなる
ポジショニングを怠ることで拘縮や褥瘡が進行すると、着替えや清拭、体位変換などの日常ケアがやりにくくなります。
関節が固まり思うように動かせなかったり、皮膚が傷つきやすくなったりすることで、ひとつひとつのケアに時間と手間がかかるのです。
また、本人も痛みや不快感が生じて、介助時の協力も得にくくなるため、結果的に現場の負担が増大します。
予防的なポジショニングは、介護者・利用者双方にとって大切な支援です。
ポジショニングのコツ
それでは、具体的なポジショニングのやり方を解説します。
・仰臥位のポジショニング

仰臥位(ぎょうがい)では、まず首の後ろにすき間ができないよう枕で自然なカーブを支えます。
肩と骨盤の位置がねじれず一直線になるよう整え、身体の左右差をなくすことが大切です。
膝裏にはクッションを入れてすき間を埋め、下肢全体を支えることで腰への負担を軽減。
膝同士がぶつからないよう軽く開き、腕は肋骨に当たらない位置にクッションで支持すると、全身が安定し、リラックスしやすい姿勢が作れます。
・側臥位のポジショニング

側臥位では、耳・肩・骨盤が一直線になるよう体幹のねじれを防ぎ、首は枕で自然なカーブを保ちます。
背中側にクッションを入れて“30°側臥位”を維持し、下側の腕は前に出して肩を抜くことで圧迫を軽減します。
膝同士が当たらないよう間にクッションを挟み、全身がふんわり支えられる安定した姿勢をつくることがポイントです。
・長坐位のポジショニング

長坐位(ちょうざい)では、背上げを30〜45度にし、骨盤をしっかり背もたれ側へ入れて座面に密着させます。
腰の後ろにタオルやクッションを入れて骨盤を立てると、前かがみや腰痛を防げます。
膝の下にクッションを入れて軽く曲げ、膝が伸びきらないように調整し、足底をしっかりベッドに接地させることで、全身が安定した姿勢になります。

