心筋症の治療
心筋症の治療は、特発性と二次性で大きく異なります。
特発性心筋症
特発性心筋症の治療では、薬物療法が第一選択です。
薬物療法では、心不全の進行を抑えるβ遮断薬や、血圧を下げて心臓の負担を軽くするACE阻害薬が使用されますただし、ACE阻害薬に副作用がある場合にはアンジオテンシン受容体阻害薬(ARB)の検討が必要です。
心不全の症状が強い場合には、フロセミドという利尿剤の服用により症状を改善します。
心筋症で不整脈を合併している場合には、不整脈の内容に応じてペースメーカーやICDという装置を体内に埋め込む手術を行います。
脈が遅くなる徐脈症状にはペースメーカー、心室細動や心室頻脈のような突然死を引き起こす致死性の不整脈がある場合には除細動機能がついているICDが必要です。
心臓の電気信号に異常がある場合は、CRT(心臓同期両方)の機能がある心臓ペースメーカが使用されます。
肥大型心筋症では、厚くなった心筋を減らすために経皮的中隔心筋焼灼術(PTSMA)というカテーテル治療が行われる場合があります。
PTSMAでは心筋を意図的に壊死させることで症状の改善が期待できるでしょう。
拡張型心筋症では、左室を形成する外科的手術(バチスタ手術)や、重症の場合には心臓移植により治療を行う場合があります。
また、心臓弁膜症を合併した場合には、人工弁置換術が選択されます。
二次性心筋症
二次性心筋症では主な要因である病気の治療が重要です。
虚血性心筋症では、冠動脈形成術(PCI)や心臓のバイパス手術が行われます。
PCI:冠動脈形成術。手首や足の付け根から細い管を入れて心臓の血管を広げて金属で支える。
バイパス手術:詰まった血管を体の他の部分から採取した血管で縫い合わせる手術
心サルコイドーシスの場合は過剰な免疫応答を抑制するためにステロイドの内服を行うこともあります。重症例や進行した場合には化学療法や自己末梢血幹細胞移植による治療が必要となります。
※ 化学療法:抗がん剤を用いた治療。タンパク質の減少や沈着したアミロイドの減少効果がある。
※ 自己末梢血管細胞移植:さまざまな細胞に分化する能力を持つ幹細胞を自己で採取し、化学療法後に体内に戻すことで骨髄を再生させる治療法
心筋症になりやすい人・予防の方法
拡張型心筋症は、遺伝子変異やウイルス感染、自己免疫の低下との因果関係があり、肥大型心筋症は遺伝の影響が大きいと報告されています。このため自己免疫疾患を抱えている方は注意が必要です。ウイルス感染を引き起こさないよう、感染対策やワクチンの接種をおこないましょう。
また、急性心筋炎の炎症が長引くことで、拡張型心筋症に移行する可能性があるため、診断され症状がある場合は無理をせず体を休めることが大切です。
二次性心筋症を予防するためには、減塩や適度な飲酒、禁煙といった生活習慣の見直しをおこない、過度なストレスは避けましょう。
関連する病気
心不全心筋炎不整脈心臓弁膜症
狭心症心筋梗塞サルコイドーシスアミロイドーシス
自己免疫疾患
参考文献
日本循環器学会 心筋症診療ガイドライン
日本心臓財団
厚生労働省 指定難病名一覧表
日本アミロイドーシス学会
心臓サルコイドーシス診療ガイドライン
慢性冠動脈疾患診断ガイドライン

