死産した子をカバンに入れて過ごし、公園に埋めた女性に執行猶予 裁判長「適切に相談できる相手を」

死産した子をカバンに入れて過ごし、公園に埋めた女性に執行猶予 裁判長「適切に相談できる相手を」

●「自分の身体に興味がない」

弁護側から証拠や証人の申請はなく、被告人質問に移った。被告人はどこかうつろな様子で、途切れ途切れに答えた。

もともと生理不順もあり、妊娠の確定的判断ができないまま、時が流れた。周囲に相談できる人もいなかったという。

当時の心境を「自暴自棄だった」「自分の身体に興味がない」と語り、勤務先で死産した記憶はあるが、それ以外について思い出せないと述べた。

母親とは、10代から20代にかけて互いに複雑な事情を抱えていたとし、コミュニケーションは取れていなかった。

事件当時も、定期的に実家に帰ることはあったものの、母親もその妊娠には気付かなかった。

現在は食事に出かけるなど、関係が回復しており、社会福祉士らの支援を受けて社会復帰の準備を進めているという。

弁護人:当時、誰かに相談できなかったのはどうしてですか。
被告人:もともと人に頼るのが好きでなく、当時は誰の顔も浮かびませんでした。

弁護人:では、それが改善して今後は相談していこうと思ったきっかけは?
被告人:自分の子の命が…。

徐々に声がかすれていき、聞き取ることはできなかった。

●「早く供養してあげなきゃと思って」

検察官の質問も続いた。犯行の悪質性を問い詰める口調に対して、被告人は言葉を詰まらせながら答えた。ただ、ゆっくりながらも当時を思い出しながら答えようとする様子が見受けられた。

検察官:犯行後、旅行には行ったんですか。
被告人:行っても、うわべだけの会話で、旅行中も何を喋ったとか覚えてなくて。予定が入ってたから行かないとって気持ちだけで。

検察官:遺体を埋めようと思ったのは?
被告人:遺体のままでなく、早く供養してあげなきゃと思って。思いついたのが土に埋めて、還してあげなきゃって。

防犯カメラの映像から、遺棄した時刻は午前9時台の約30分でおこなわれたとされている。穴を掘り、遺体に土をかぶせる際の心情については問われなかった。

検察官:遺体の写真を見ましたか。
被告人:いいえ。

検察官:虫に食べられ、腸や骨が出ていました。
被告人:それが土に還ってることと認識していた。自首して我に返って残酷なことをしたなと。

遺体は被告人の母親が引き取って葬った。母親が面会に訪れた際、被告人は「関係性がよくない時期が長く、これ以上迷惑をかけるより、会わない方がいいのでは」と断った。

しかし、母親が帰宅後、警察官からこれまでの関係性について謝罪していたと聞かされて、被告人も手紙のやりとりを始めた。

自首のきっかけについては、遺体が発見されたニュースを見て「申し訳ないことをした、早く話さなきゃ、誰かに話したかった、罪を償いたいと思った」と溢れるように言葉を続けた。

学生時代に学んだ語学を活かし、再び勉強したいという。検察官が、昼職での生活安定までの苦労や、「また夜職に戻るのか」といった心配をぶつけた。

「それはめっちゃ言われるけど」と強めに言葉を発した後、「これまで夢もなく真っ暗だったけど、今ではやりたいことや周りも温かいと気付かされ、戻りたい場所がある。普通になりたい」とはっきり答えた。

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