歯肉がんは口腔内に発生するがんの1種です。口腔内に発生した場合でも、むし歯・歯周炎といった症状を連想し、がんの可能性を見落とす方は珍しくありません。
そのため口腔内の変化を感じた場合、歯科医院で症状が改善しない場合は、他の可能性を考え耳鼻咽喉科・専門外来での検査を受けることが重要です。
今回は歯肉がんの症状について解説していきます。
※この記事はMedical DOCにて『「歯肉がんの症状」はご存知ですか?早期発見のポイントや治療法も解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修歯科医師:
坪光 玄義(歯科医師)
鶴見大学歯学部卒業 / 平成24年歯科医師免許証取得 / 現在は地挽歯科医院、蕨にしき町歯科・口腔外科(いずれも非常勤)
歯肉がんとは?
歯肉がんとは、口腔がんの1種で歯茎に発生するがんを指します。口腔がんはがん全体の約2%を占めており、最も多い口腔がんは舌(ぜつ)がんです。
歯肉がんは舌がんの次に多く発症が確認されています。口腔に発生するがんは加齢とともに発症率が高まるといわれており、定期的な検査による早期発見が重要です。ここからは、歯肉がんについて解説していきます。
上下の歯肉にできるがん
歯肉がんは、口腔内の歯茎にがん腫が発生するのが特徴です。歯肉がんは上皮性(じょうひせい)組織に発生するがんで、大部分は口内の粘膜に悪性腫瘍が発生します。
発症の原因として、飲酒・喫煙は発症のリスクが高まると考えられています。また白板症と呼ばれる、擦っても取れない白い病変の発生は、悪性化しがんに変異する可能性が高く注意が必要です。
臼歯部によくみられる
歯肉がんの発症が高いと考えられている箇所は、下顎の臼歯と呼ばれる一番奥に存在する歯の周辺です。臼歯周辺に歯肉がんが多い理由として、喫煙・飲酒に加え刺激が入りやすく、細胞へのダメージが他の歯より大きいためだと考えられています。
口腔がんの発症者の約80%が50代以上ですが、まれに若年層での発症も確認されています。気になる症状が現れたら、耳鼻咽喉科の診察を受けましょう。
歯肉がんの症状は?
この病気の症状は、歯周病・口内炎に近いことが特徴です。そのため見過ごしてしまう方は珍しくありません。
ただ歯肉がんは放置し悪化すると、治療が完了しても発声に障害がでる可能性があるため、早期発見・早期治療が重要です。ここからは歯肉がんの症状について解説していきます。
歯がぐらぐらする
歯肉がんを発症すると、歯茎によって支えられていた歯がぐらぐらと動くようになります。この歯が動くことを動揺と呼び、歯周病をはじめとする口腔に発生する病気の初期症状として代表的なものです。
放置しておくとがんの進行が進むだけでなく、動揺も進行し最悪の場合抜歯が必要となります。奥歯は噛み合わせ・発声・表情筋に影響を与えるため、普段から気を配りましょう。
歯茎が腫れる
歯周炎・歯周病のように、発症すると歯茎の腫れが発生します。初期の歯茎の腫れから強い痛みを感じるケースはまれです。歯周炎の場合は進行すると出血・歯槽骨の吸収などが発生します。
歯肉がんの場合は腫れが大きくなる・表面がひび割れた状態で盛り上がるなど、通常の歯周炎と進行が異なるのが特徴です。歯茎の腫れがこれまでと異なると感じた場合、速やかに耳鼻咽喉科を受診しましょう。
歯茎から出血する
歯茎からの出血は初期症状では起こりません。症状が進行し歯茎の腫れ・隆起が確認できるようになると、それに比例して出血も発生します。
歯肉がんを発症した場合、出血以外に粘膜がただれる・斑点などが現れるのが歯周炎と異なる点です。特に斑点はセルフチェックでは見過ごしやすいため、注意しましょう。
また食事中に噛みにくいと感じるだけでなく、飲み込みにくさを感じる方は少なくありません。この食事中の違和感は歯周炎と大きく異なる特徴です。普段の食事に不便さを感じたら歯科医院・耳鼻咽喉科などを受診しましょう。
歯肉に口内炎のようなものができる
これまで解説してきたように、口内の粘膜にさまざまな症状が発生するため口内炎が出来ただけと誤認する方は珍しくありません。
しかし見た目だけで歯肉がん・口内炎を見分けるのは非常に困難です。そのため、発症してから完治に時間が掛かっている場合、口内炎以外の発症を疑ってみましょう。
具体的には、2週間以上口腔内の症状が治まらない際は、耳鼻咽喉科にて検査を受けるようにしましょう。

