慢性心不全は比較的安定した経過を示すこともありますが、何らかの要因により急激に悪化する急性増悪を起こす可能性があります。急性増悪は生命に関わる重篤な状態であり、迅速な医療介入が必要となります。症状の急激な変化を見逃さず、適切に対応することが患者さんの予後を左右します。ここでは緊急性の高い症状とその対処方法について詳しく説明します。

監修医師:
井筒 琢磨(医師)
2014年 宮城県仙台市立病院 医局
2016年 宮城県仙台市立病院 循環器内科
2019年 社会福祉法人仁生社江戸川病院 糖尿病・代謝・腎臓内科
所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本不整脈心電図学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心エコー学会
急性増悪の警告サイン:緊急性の高い症状
慢性心不全は比較的安定した状態が続くこともありますが、何らかのきっかけで急激に悪化する「急性増悪」を起こすことがあります。症状の急激な変化を見逃さないことが、重篤な状態を避けることが重要です。
急速に進行する呼吸困難と起座呼吸
心不全が急に悪くなるときに最も注意すべき症状が、急速に進む息苦しさ(呼吸困難)です。数時間から数日のうちに、これまで普通にできていた動作でも息が切れるようになり、「少し歩くだけでも苦しい」「布団に横になると息がしづらい」といった状態になることがあります。
特に、横になると息苦しくなり、座っていないと呼吸ができないという症状は「起座呼吸(きざこきゅう)」と呼ばれ、肺に血液がたまりすぎている(肺うっ血)ことを示す重要なサインです。
急性心不全では、肺に急速に水分が貯留する肺水腫という状態を引き起こすことがあります。この場合、激しい呼吸困難とともに、ピンク色の泡状の痰が出ることがあります。酸素不足により唇や指先が紫色に変色するチアノーゼが現れることもあり、これらは緊急性の非常に高い症状です。
急性増悪の引き金となる要因はさまざまです。風邪などの感染症、血圧の急激な上昇、不整脈の出現、過度の塩分や水分の摂取、処方された薬の自己中断などが代表的です。また、心筋梗塞などの新たな心臓の問題が急性心不全を引き起こすこともあります。
浮腫の急激な悪化と体重増加
慢性心不全患者さんにおいて、2〜3日の間に2kg以上の体重増加が見られた場合は、体内への水分貯留が急速に進行している可能性があります。これは心不全の急性増悪を予測する重要な指標であり、早期に対応することで入院を回避できることもあります。
急速なむくみの悪化は、下肢だけでなく、腹部や顔面にも及ぶことがあります。腹水が貯留すると腹部膨満感が強くなり、食事摂取が困難になることもあります。また、肺に水分が貯まる胸水により、呼吸困難がさらに悪化します。
まとめ
心不全は心臓のポンプ機能が低下する症候群であり、息切れ、むくみ、疲労感などの症状が現れます。原因は虚血性心疾患、高血圧、弁膜症など多岐にわたり、早期発見と適切な治療が生活の質と予後を大きく左右します。症状の変化に注意を払い、体重測定などの自己管理を継続することが急性増悪の予防につながります。
症状や治療に関する具体的な判断は、必ず医療機関で専門医の診察を受けたうえで行ってください。
参考文献
国立循環器病研究センター「心不全」
日本心臓財団「心不全とは」
