
超特急のメンバーとして活躍する一方、俳優としても躍進がとまらない草川拓弥。日本映画専門チャンネルでは、「2ヶ月連続 俳優 草川拓弥がとまらない!」と題し、草川拓弥の出演作を11月と12月の2ヶ月にわたり特集放送。その1作として、「みなと商事コインランドリー」(通称:「みなしょー」)が放送される。
今や連続ドラマの中でも人気ジャンルの1つとなったBLドラマ。毎クール、フレッシュな若手俳優たちが、時に甘く、時に狂わしい恋模様を届けている。
だが、その歴史の中でも日常系BLというジャンルで「みなしょー」以上に愛されたドラマは、まだない気がする。漫画:缶爪さわ、原作:椿ゆずによる同名コミックを原作に、恋に臆病なアラサー男子と愛重めのイケメン高校生による年の差恋愛をピュアに描き、「おっさんずラブ」(2016年ほか、テレビ朝日系)「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」(2020年、テレビ東京系)「美しい彼」(2021年ほか、MBSほか)に続く金字塔として今なお熱い支持を集めている。
草川拓弥が演じたのは、主人公・湊晃。湊さんに想いを寄せる高校生・香月慎太郎(通称:シン)を演じたのは、西垣匠。観れば心癒やされ、ハッピーな気持ちになれるセロトニン製造機な本作の魅力を語り尽くしたい。
■シンみなは「かわいい」×「かわいい」の二重奏
「みなしょー」第1の魅力は、キャラクターのかわいさ。これに尽きると声を大にして言いたい。
シンの積極的なアピールにアタフタしている湊さんも、湊さんへの愛があり余りすぎて突然様子がおかしくなるシンも、どちらもかわいくて、この2人のかわいさに肩を並べられるのはシルバニアファミリーかサンリオのキャラクターたちくらい。演じているのはどちらも成人男性なのに、そんなことを感じさせないくらい「かわいい生き物」として「みなしょー」の世界を生きる2人。恋する男の子たちを愛でる楽しさを教えてくれるのが、「みなしょー」だ。
例えば、湊さんはシンの猛攻にいつもうろたえている。風邪をひいた湊さんを看病しようとシンがやってくると、部屋に2人きりというシチュエーションに耐えきれず「ヒーーー!」とすっとんきょうな声をあげ、シンが見知らぬ女性と一緒にいるのを見かけたらヤキモチでついふてくされた態度をとってしまう。どう考えても、湊さんはシンにぞっこん。でも湊さんだけはそれを認めたくない。片想いと両想いのはざまでもんどり打っている湊さんの姿に、脳が溶けそうになる。
もちろんシンのかわいさも負けていない。10歳年下ではあるけれど、この恋をリードするのはシン。普段は礼儀正しく敬語で接しているのに、唐突に「友達なのに家にも行けねえとか変だろ」とタメ語をぶちかますギャップもいいが、これはあくまで序の口。連絡が取れない湊さんに何十通もLINEを送ったり、湊さんとお風呂に入っている様子を想像して天に召されそうになったり。普段はクールなシンが、湊さんのことになると突然常軌を逸する溺愛男子感が最高にキュート。
一般的にBL作品のカップルは、どちらかがかわいければ、どちらかがカッコいいというふうにキャラクターの違いが出るのだが、“シンみな”は「かわいい」×「かわいい」の二重奏。「みなしょー」とは、かわいい男の子たちのイチャコラを永遠に眺められる箱庭なのだ。
■「キュン」×「ほのぼの」×「切ない」の絶妙なバランス
そんな2人が繰り出すキュンシーンの数々が、「みなしょー」第2の魅力だ。水面きらめくプールでの寸止めキスシーンに、シーツ越しにシンが湊さんにボディタッチするちょっと大人なシーン、おでことおでこをくっつける湊家秘伝のおまじないシーンなど、思い出すだけでため息がこぼれるキュンシーンが1話に1回は出てくる。
個人的にはいつもシンの猛攻をあしらう湊さんが、珍しく素直になる瞬間がツボ。第2期の温泉旅行回(第8話)で放った「早くギュッとしろよ」は、湊さん史上最高にかわいい。「みなしょー」とは、オタクの見たいものが全部詰まったキュンシーンの玉手箱なのだ。
「みなしょー」第3の魅力は、優しい世界観。「みなしょー」には悪い人が出てこない。最初は何かとシンをからかっていた英明日香(奥智哉)も、いつしかシンにとって数少ない友人の1人となり、湊さんの初恋の人・佐久間孝之(福士誠治)も、シンにとっては最大の壁でありながら、まるで憎めない天然キャラ。シンの妹・桜子(豊嶋花)は2人の恋を援護射撃する最大の味方であり、明日香と佐久間柊(稲葉友)のサブカップルも“シンみな”とは違うじれったさがあって応援のしがいがある。
多少の事件は起これど、決してシリアスにはなりきらず、ほのぼのとしたトーンが貫かれているので、観ていてストレスがかからないし、安心してこの世界に没入できる。「みなしょー」とは、お疲れ気味の私たちの心を浄化する極上のセラピーなのだ。
その一方で、時折胸が締めつけられるような展開も待っている。この切なさが「みなしょー」第4の魅力だ。たとえば、第1期の第8話。シンの真っすぐな愛情を受け止める資格が自分にはないと思った湊さんは、シンとは付き合えないと伝える。ただ一途に湊さんを想うシンと、シンがまぶしければまぶしいほど自分の弱さを引け目に感じてしまう湊さん。とっくに両想いのはずなのに、なかなか縮まらない距離がもどかしい。
さらに2人が恋人同士になった第2期でも切ない展開が待っている。特にクライマックスで起こる“あの事件”は、ここまでずっと“シンみな”の歴史を見てきたからこそ、余計に胸が引き裂かれる。ただポップでスイートなラブコメじゃない。「みなしょー」とは、甘酸っぱくてほろ苦い純愛ストーリーなのだ。
■草川拓弥と西垣匠が「みなしょー」を名作にした
そして、「みなしょー」第5の魅力にして、このドラマ化が成功した最大の要因と言えるのが、草川拓弥と西垣匠の名演だ。
オーディションを経てシン役に抜擢された西垣匠は、憂いと湿り気を帯びた雰囲気が色気となって、アラサーの心をかき乱す高校生を見事に体現。持ち前の品の良さが、大家族の長男として妹弟たちの面倒を見てきたシンのしっかりした性格に説得力を与えている。
それでいて、明日香が湊さんにちょっかいをかけようものなら、親の仇を見るような目で睨みつけるなどコミカルな演技もぴったり。何より湊さんにグイグイ迫るときの危険な雄(オス)みは、湊さんでなくても悲鳴を上げるレベル。上述のシーツ越しにボディタッチをするシーンでは、途中であえて髪を耳にかける仕草を挟むことで、より色気が爆発。
シンの重すぎる愛を、笑いと色気の両方向で表出させた西垣匠なくして、「みなしょー」の成功はなかっただろう。
そして、「みなしょー」の笑いと切なさを交えた世界観を構築した最大の立役者が、主演の草川拓弥だ。シンに振り回される湊さんの胸中を軽やかなモノローグと表情豊かなリアクションでユーモラスに表現。シンの前でオドオドと目を泳がせ、「はあっ!?」を連発する湊さんをあざとさゼロで演じ上げた草川拓弥の功績はあまりにも大きい。
また、ちゃんと兄貴らしい頼もしさがあるのも、湊さんの魅力。軽薄そうに振る舞っている明日香の本質を見抜いたアドバイスをしたり、成績が回復したシンの頭をわしゃわしゃしたり、湊さんの持っている包容力を草川拓弥は上手に表していた。
湊さんは自分に自信はないけれど、圧倒的に“陽”の人物だ。だから、あのコインランドリーは近所の人たちの憩いの場になっているし、いろんな人が湊さんを慕っている。そうした“日向”感を草川拓弥が自然に表現していたからこそ、“日陰”感のあるシンが湊に惹かれてやまないのもスッと理解できた。
草川拓弥と西垣匠が湊さんとシンでなければ、「みなしょー」はこんなにも愛されるドラマにはならなかった。
BLドラマは今や若手俳優の登竜門。草川拓弥と西垣匠もその後多くのドラマや映画に出演している。俳優として大きく成長する姿に胸を熱くしながら、でもこのときこの瞬間にしかない輝きが恋しくなるのもまた事実。「みなしょー」とは、草川拓弥と西垣匠という二人の俳優のかけがえのないひとときを記録したアルバムなのだ。
ぜひ日本映画専門チャンネルで「みなしょー」というアルバムをめくり、あの二度と帰ってこない夏にタイムスリップしてほしい。
文=横川良明

