心不全は単独の疾患ではなく、さまざまな心臓の病気が進行した結果として生じる症候群です。虚血性心疾患や高血圧、弁膜症など多様な原因疾患が心不全につながります。原因疾患を正しく理解し適切に管理することは、心不全の予防と治療において極めて重要です。ここでは心不全を引き起こす主要な原因疾患について、それぞれの特徴と心不全との関連を解説します。

監修医師:
井筒 琢磨(医師)
2014年 宮城県仙台市立病院 医局
2016年 宮城県仙台市立病院 循環器内科
2019年 社会福祉法人仁生社江戸川病院 糖尿病・代謝・腎臓内科
所属学会:日本内科学会、日本糖尿病学会、日本循環器学会、日本不整脈心電図学会、日本心血管インターベンション治療学会、日本心エコー学会
心不全を引き起こす主要な原因疾患
心不全は単独の疾患ではなく、さまざまな心臓の病気が進行した結果として生じる症候群です。心不全に至る原因疾患を理解することは、予防と早期治療の観点から重要です。
虚血性心疾患:頻度の高い原因
日本において心不全の原因として多いのが虚血性心疾患、特に心筋梗塞です。冠動脈が動脈硬化により狭窄または閉塞すると、心筋への血流が途絶え、心筋細胞が壊死します。壊死した心筋は収縮能力を失い、心臓全体のポンプ機能が低下します。
急性心筋梗塞を発症した場合、速やかに治療を受けることで心筋のダメージを小限に抑えることができます。しかし、治療が遅れたり、広範囲の心筋梗塞を起こした場合は、その後慢性心不全へと移行する可能性が高まります。また、心筋梗塞を繰り返すことで、徐々に心機能が低下していくケースも少なくありません。
狭心症の段階で適切な治療を受けることも、心不全の予防において重要です。冠動脈バイパス術やカテーテル治療により血流を改善することで、心筋梗塞の発症を防ぎ、結果として心不全への進行を抑制できます。虚血性心疾患の危険因子である高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙などを適切に管理することが、一次予防として極めて重要です。
高血圧性心疾患と弁膜症
長期間にわたる高血圧も、心不全の重要な原因の一つです。血圧が高い状態が続くと、心臓は高い圧力に逆らって血液を送り出さなければならず、左心室の筋肉が肥大します。初期段階では心肥大により代償されますが、やがて心筋の線維化が進行し、心臓の拡張機能や収縮機能が低下していきます。
高血圧による心不全は、比較的高齢の患者さんに見られることがあります。高血圧は自覚症状に乏しいため、治療を受けていない方も存在します。しかし、適切な降圧治療により血圧をコントロールすることで、心不全への進行を大幅に抑制できることが研究で示されています。早期からの血圧管理が、心不全予防の基本となります。
心臓弁膜症も心不全の重要な原因です。大動脈弁狭窄症・閉鎖不全症などの弁膜症では、心臓に過度の負担がかかり、徐々に心機能が低下します。弁膜症は心臓超音波検査で診断可能であり、重症度に応じて手術やカテーテル治療が検討されます。
まとめ
心不全は心臓のポンプ機能が低下する症候群であり、息切れ、むくみ、疲労感などの症状が現れます。原因は虚血性心疾患、高血圧、弁膜症など多岐にわたり、早期発見と適切な治療が生活の質と予後を大きく左右します。症状の変化に注意を払い、体重測定などの自己管理を継続することが急性増悪の予防につながります。
症状や治療に関する具体的な判断は、必ず医療機関で専門医の診察を受けたうえで行ってください。
参考文献
国立循環器病研究センター「心不全」
日本心臓財団「心不全とは」
