食事療法は透析治療の効果を高め、合併症を予防するうえで欠かせない要素です。適切な栄養管理により透析の効率が向上し、生活の質を保つことができます。ここでは透析を受けている方が日常的に気をつけるべき栄養素と、その管理方法について具体的に解説します。個人の状態に応じた食事計画を立てることが重要です。

監修医師:
浅川 貴介(医師)
2004年私立海城高等学校卒業
2010年私立東邦大学医学部卒業医師免許取得
2012年公益財団法人日産厚生会玉川病院
2016年東邦大学医療センター大橋病院腎臓内科
2018年医療社団法人七福会ホリィマームクリニック
2022年浅川クリニック
【免許・資格】
・医学博士
・日本内科学会総合内科専門医
・日本腎臓学会腎臓専門医
・日本透析医学会透析専門医
・労働衛生コンサルタント(保健衛生)
・東京都福祉局認定難病指定医
透析患者さんにおける食事療法の基本原則
透析治療を受けている方にとって、食事療法は薬物療法と並ぶ治療の柱です。適切な食事管理により、透析の効率を高め、合併症を予防し、生活の質を向上させることができます。ただし、食事療法の内容は個人の身体状態や透析方法によって異なるため、医師や管理栄養士の指導を受けることが大切です。
タンパク質と塩分の管理
透析患者さんのタンパク質摂取量は、透析前の保存期とは異なり、一定量の摂取が推奨されます。透析によって失われるタンパク質を補い、栄養状態を維持するため、体重1kgあたり1.0〜1.2g程度の良質なタンパク質(肉、魚、卵、大豆製品など)を摂取するとよいでしょう。ただし、過剰摂取は老廃物の蓄積につながるため、適量を守ることが大切です。
塩分については、1日6g未満を目安に制限します。塩分の過剰摂取は血圧上昇や浮腫の原因となり、心臓や血管への負担を増大させます。調味料の使用量を減らし、出汁や香辛料で風味を補う工夫が有効です。加工食品や外食は塩分が多く含まれるため、できるだけ避けることが推奨されます。具体的には、ハム、ソーセージ、練り製品、漬物、インスタント食品などは控えめにし、新鮮な食材を使った調理を心がけることが望ましいです。
カリウムとリンのコントロール
カリウムは心臓のリズムに影響を与えるため、特に注意が必要な電解質です。血液中のカリウム濃度が高くなると不整脈を引き起こし、重篤な場合は生命に関わります。カリウムを多く含む生野菜、果物、芋類、豆類などは摂取量を調整します。野菜は茹でこぼしや水にさらすことでカリウムを減らせます。ただし、完全に除去できるわけではないため、摂取量そのものの管理が重要です。
リンは骨や血管の石灰化に関係し、過剰摂取は骨代謝異常や動脈硬化を招きます。リンは乳製品、加工食品(ハムやソーセージ)、インスタント食品に多く含まれるため、これらの摂取を控えます。また、リン吸着薬を食事とともに服用することで、食事由来のリンの吸収を抑えることができます。管理栄養士による定期的な栄養指導を受け、個別の状態に応じた食事計画を立てることが重要です。食事療法は継続が鍵となるため、無理のない範囲で工夫を重ねることが推奨されます。
まとめ
透析治療は、適切な知識と自己管理により、多くの方が長期的に継続し、充実した日常生活を送っています。血液透析と腹膜透析にはそれぞれの特徴があり、ライフスタイルや身体状態に応じて選択できます。食事療法や水分管理、感染予防などの日常的なケアが、治療効果を高め、合併症を防ぐ鍵となります。体調変化を早期に察知し、医療スタッフと密に連携することで、より安全で快適な透析生活が実現します。疑問や不安がある場合は、遠慮なく専門機関に相談し、適切な支援を受けることが大切です。
参考文献
東京女子医科大学病院「血液浄化療法科:透析療法の種類」
厚生労働省透析医療における標準的な透析操作と院内感染予防に関するマニュアル
日本透析医学会参考文献
透析の開始と継続に関する 意思決定プロセスについての提言

