監修医師：
井林雄太（井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院）
大分大学医学部卒業後、救急含む総合病院を中心に初期研修を終了。内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。大手医学出版社の医師向け専門書執筆の傍ら、医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。ホルモンや血糖関連だけでなく予防医学の一環として、ワクチンの最新情報、東洋医学（漢方）、健康食品、美容領域に関しても企業と連携し情報発信を行い、正しい医療知識の普及・啓蒙に努めている。また、後進の育成事業として、専門医の知見が、医療を変えるヒントになると信じており、総合内科専門医（内科専門医含む）としては1200名、日本最大の専門医コミュニティを運営。各サブスぺ専門医、マイナー科専門医育成のコミュニティも仲間と運営しており、総勢2000名以上在籍。診療科目は総合内科、内分泌代謝内科、糖尿病内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、精神科、整形外科、形成外科。日本内科学会認定医、日本内分泌学会専門医、日本糖尿病学会専門医。
先天性股関節脱臼の概要
股関節は、骨盤の一部である寛骨臼と、大腿骨の頭（大腿骨頭）から成り、通常は大腿骨頭が寛骨臼（骨頭の受け皿）にはまっています。先天性股関節脱臼では、何らかの理由で、この寛骨臼と大腿骨頭の位置関係がずれてしまいます。このずれの程度によって、脱臼、亜脱臼、寛骨臼形成不全として診断されます。以前は出生前の原因によって発生すると考えられていましたが、現在では出生後の環境も大きく関係していることがわかっています。
先天性股関節脱臼の原因
これまで先天性股関節脱臼（CDH）は、出生前に起こる先天的な問題と考えられてきました。しかし、近年では出生後に発症するケースも少なくないことがわかってきました。そのため、CDHには先天的な要因と後天的な要因の両方が関わっていると考えられています。
先天的な要因
遺伝的要因
CDHは家族内で発症することが多いため、骨盤の形状に遺伝が関わっていると考えられます。親や祖父母にCDHの既往歴があるか、変形性股関節症による痛みや歩行困難、股関節手術歴があるかを確認することが大切です。
子宮内環境要因
胎児が子宮内で膝を伸ばしたままの姿勢で成長すると、股関節脱臼が起こりやすくなります。特に骨盤位（お尻が下になった状態）での出産では、CDHの発生リスクが通常の約10倍になると言われています。
後天的な要因
出生後の環境要因
新生児期は関節が柔らかいため、無理な姿勢を長時間続けると、発達性股関節形成不全（DDH）になることがあります。例えば、巻きオムツやおくるみ、スリングで下肢が閉じたまま伸ばされる姿勢を続けると、出生後に股関節脱臼が発生することがあります。
季節性の影響
CDHは秋冬生まれの赤ちゃんに多いことが知られています。寒い季節には厚着をするため、足の動きが制限されやすくなることが原因の一つと考えられます。
