先天性股関節脱臼の前兆や初期症状について
CDHは、早期に発見し、早期に治療を始めることが重要です。そのため、親や医師が前兆や初期症状を理解しておくことが大切です。以下に、乳児のCDHに見られる主な症状を紹介します。
1. 股関節の開排制限
股関節を外側に開くことが難しくなる状態です。健診では、股関節を90度に曲げて開いたときに、開く角度が20度以上制限されているとCDHの可能性があると診断されます。また、乳児を仰向けに寝かせ、股関節と膝を90度に曲げたときに、左右の膝の高さを比べる「Allis徴候」という検査も行われます。ただし、股関節の開排制限があるからといって、必ずしもCDHとは限りません。
2. 太ももの皮膚の溝(大腿皮膚溝)の非対称
股関節脱臼が起こると、太ももの内側の皮膚にしわができ、その位置や数が左右で異なることがあります。ある報告によると、太ももの皮膚溝に左右差がある乳児の約10%で股関節脱臼が見られたとされています。しかし、正常な乳児でも左右差が見られることがあり、これだけではCDHの診断はできません。
3. 脚の長さの左右差
脱臼によって大腿骨(太ももの骨)の位置がずれることで、脚の長さに差が出ることがあります。仰向けに寝かせて股関節を90度に曲げ、膝を屈曲させたときに、脱臼している側の膝が低く見えることがあります。これも「Allis徴候」の一つです。
4. クリックサイン
股関節を開いたり閉じたりした際に、脱臼した大腿骨頭が股臼に滑り込む感触や音がすることがあります。これを「クリックサイン」といい、股関節が不安定であることを示す重要なサインです。しかし、このサインを無理に確認しようとすると、骨にダメージを与える可能性があるため、慎重に行う必要があります。
上記のような症状がみられた場合は、まずは小児科を受診しましょう。
その後、必要に応じて整形外科を紹介されるというパターンが一般的です。
先天性股関節脱臼の検査・診断
CDHは、早期発見と早期治療がとても重要です。そのためには、正しい検査と診断が必要です。ここでは、CDHの診断に使われる主な検査方法を紹介します。
1. 理学的検査(身体検査)
CDHの診断で最初に行われるのが理学的検査です。
股関節の開排制限、太ももの皮膚の皺の左右差や脚の長さの違い、クリックサインをまず見ます。
ただし、これらの検査は経験豊富な医師であっても、見逃しや誤診の可能性があるため、注意が必要です。
2. 画像検査
理学的検査でCDHが疑われた場合、画像検査を行って確定診断をします。
レントゲン検査
大腿骨や股関節の骨の状態を確認する検査です。しかし、乳児の骨はまだ発達途中で、軟骨が多いため、レントゲンだけでは正確な診断が難しいことがあります。
超音波検査
放射線を使わないため乳児にとって安全で、軟骨の状態も確認しやすい検査です。特に体位を組み合わせて行うGraf法や前方法といった超音波の技術がCDHの診断に有効で、短時間で行える簡便な検査法です。
乳児健診での流れ
通常、乳児健診ではまず問診を行い、家族に股関節の病歴があるか、女児であるか、骨盤位分娩だったかなどを確認します。その後、視診や触診によって股関節の動きや脚の長さ、皮膚の皺をチェックします。これらでCDHが疑われる場合、専門医による詳しい検査が必要となります。二次検診では、より詳細な理学的検査に加え、レントゲンや超音波検査などで最終的な診断が行われます。

