●立証のために残しておくべき証拠
──裁判を見据える場合、どのような証拠を記録しておくとよいでしょうか。
暴力であれば、ケガの写真や診断書、暴言であれば、録音やメール・LINEの履歴などが有力な証拠となりえます。
しかし、サイレントモラハラは「無視」や「不機嫌な態度」といった行為が中心で、客観的な証拠を残しにくいのが実情です。
だからこそ、地道に事実を積み重ねることが重要になると考えられます。具体的には次のような方法が考えられるので参考にしてください。
(1)詳細な日記・メモをつける
いつ、どこで、相手からどのような態度をとられたか、どのような言動があったかを、できるだけ具体的に記録します。その時どう感じたか、精神的にどのような影響があったかも書き添えるとよいでしょう。被害にあった時だけではなく、「日々」継続して記録することで、その行為が一時的なものではなく、執拗かつ継続的であったことを示す資料となる可能性があります。
(2) 第三者への相談履歴を残す
家族や友人、公的な相談機関に被害の実態を相談しておくことも重要です。その際、「LINE」や「メール」など、相談した日時や内容が形に残る方法にすると、相談した事実自体が、被害の存在を裏付ける証拠の一つとなりえます。
(3)医療機関の診断書
相手の継続的な行為による多大なストレスで、精神的な不調をきたしたり、体調を崩されたりした場合には、速やかに医療機関(心療内科など)を受診してください。そのうえで、医師に状況を説明し、診断書を取得しておくことが考えられます。
(4)動画による状況の記録
具体的な暴言がなかったとしても、「常に不機嫌な態度をとられている」「威圧的な様子を見せられている」といった状況は、音声だけの録音では伝わりにくいものです。可能であれば、動画で撮影することで、その場の雰囲気や相手の態度がより客観的に伝わる証拠となる可能性もあります。
サイレントモラハラを理由に離婚が認められるかどうかは、これらの証拠をもとに「婚姻関係の破綻」をどこまで具体的に立証できるかにかかっています。

●「見えない暴力」も軽視してはいけない
──11月12日から25日まで「女性に対する暴力をなくす運動」の期間です。
サイレントモラハラのように、目に見える傷や明確な言葉がないために「暴力」として認識されにくい精神的な被害も、決して軽く見るべきではありません。
こうした運動が、今まさに声を上げられずに悩んでいる人にとって、ご自身の状況を見つめ直し、勇気を持って一歩を踏み出すきっかけとなることを願っています。
もし今、無視や威圧的な態度に苦しみ、体調を崩すほど追い詰められている場合は、ひとりで抱え込まず、家族や友人、公的機関、あるいは弁護士などの専門家に相談してください。
声を上げることが、ご自身を守り、解決へ向かうための第一歩となります。
【取材協力弁護士】
有本 喜英(ありもと・よしひで)弁護士
2020年弁護士登録(大阪弁護士会所属)。企業関係法務、労災事故、一般民事全般を扱う。クライアントの「ニーズ」や思いを把握し、常に最善の解決を目指して事件に取り組みます。
事務所名:弁護士法人ブライト
事務所URL:https://law-bright.com/

