不倫夫と不倫相手を呼び出すことに成功したなつこ。弁護士を交えた話し合いの場には、これまで登場していない重要人物も出席することになっていて…。
驚くべき「第三の登場人物」
約束の日の午後。指定した駅前の静かな喫茶店に、夫と不倫相手が現れた。不倫相手は探偵に撮影してもらった証拠写真のときのような華やかさはなく、黒いスーツに真っ黒な髪を後ろに束ねている。反省を示そうとしているのだろう。
「約束通りにした。これで全て話すから、慰謝料と離婚については少し相談させてほしい…」
夫は私の要求をのめば、私が条件をゆるめてくれると思ったのだろう。しかし、私が今日2人をここに呼び出したのは、そんな生ぬるい目的のためではない。
2人を私の正面に座らせたすぐあと、私は弁護士に電話で連絡をした。その直後、弁護士がある男性をつれてやってきた。その男性を見た瞬間、女性の顔色は青ざめ、視線は定まらない様子だ。
「なつこさん、はじめまして」
その男性は、落ち着いた、それでいて冷徹な声で話し始めた。
「私は、こちらの彼女の婚約者です。佐藤と申します」
「え、婚約者…?」
圭吾が掠れた声で呟いた。 佐藤さんは静かに頷いた。
「はい。私と彼女は、ちょうどあなたが不倫を始めたころに婚約し、既に同棲していました。内容証明は、私が見たんですよ」
佐藤さんは話をつづけた。
「僕も彼女の行動が怪しいと思っていたところ、なつこさんの弁護士さんから連絡をいただき、ことの経緯をすべて把握しました」
夫のパニックを尻目に
夫はまだ状況が読めていないのか、視線を泳がせている。さらに佐藤さんが続ける。
「知ってますか?婚約の事実がある以上、僕からあなたに慰謝料請求できます。お話を進めてよろしいでしょうか」
こうして場は完全に私たちのペースだ。不倫相手の女性は、顔を覆い、小さな声で泣き始めた。
「な、なつこ!俺たちは再構築することになったんだよな?これから助け合って…」
圭吾はパニックになり、私に助けを求めてきた。彼は、私という「妻」が、まだ彼の味方だと信じたかったのだろう。しかし私は冷たい目で圭吾を見据えた。
「え?私は再構築するなんて言ってないよ。不倫の代償を払うのは、あなた自身の責任でしょ」
そして、佐藤さんに向き直り、穏やかに告げた。
「私と彼は離婚しますので、慰謝料については、どうぞ圭吾に請求してください。私はあなたを全面的に支持しますから」

