無期懲役1600人で仮釈放は1人…2024年は過去最低か 「わずかな希望」もかすむ終身刑化が鮮明に

無期懲役1600人で仮釈放は1人…2024年は過去最低か 「わずかな希望」もかすむ終身刑化が鮮明に

約1600人のうち、わずか1人──割合にして0.06%。

2024年に仮釈放された無期懲役の受刑者が1人にとどまったことが、法務省が公表した最新の「矯正統計年報」でわかった。

日本には社会復帰の可能性を完全に閉ざす「終身刑」は存在しない。しかし、実際には無期懲役囚のほとんどが獄中で人生を終える状況が続いており、その実態が改めて浮き彫りになった。(弁護士ドットコムニュース・一宮俊介)

●これからは「無期拘禁刑」に名称変更

日本の刑罰は、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留、科料──と区分されてきた。このうち、期間を定めない懲役刑が「無期懲役刑」であり、死刑に次ぐ重い刑罰である。

国は今年6月、懲役刑と禁固刑を廃止し、「拘禁刑(こうきんけい)」に一本化した。これに伴い、無期懲役は今後「無期拘禁刑」として報じられるケースが増えていく見通しだ。

無期懲役と聞くと「一生死ぬまで刑務所に入る刑」と受け止められることが多いが、刑法28条は、無期懲役の受刑者でも、刑の執行開始から10年を経過し、本人に罪を悔い改める「改悛の情」があれば、仮に釈放することができると定める。

仮釈放後も、生涯にわたり国の指導下に置かれる点には変わりない。

ただし、2005年の法改正で有期刑の上限が20年から30年へ引き上げられたことなどを受け、近年は仮釈放までに30年以上服役する運用が一般的となり、無期受刑者の多くが塀の中で亡くなっている。

こうした運用を指して、「無期懲役が事実上の終身刑化している」との批判もある。

画像タイトル

●受刑者3.3万人のうち無期は5%

刑が確定すると、受刑者は刑務所や拘置所といった刑事施設に収容されるが、現在どの程度の人数がいるのか。

国は、刑務所に収容されている受刑者の人数や罪名、新たに刑務所に入った人の数などを「矯正統計」として集計しており、月ごとの「月報」と、年ごとの「年報」を公表している。

今年7月に公表された最新版「矯正統計年報」(2024年)によると、2024年末時点で全国の刑事施設に収容されていた受刑者は3万3745人(男3万749人、女2996人)。そのうち無期懲役の受刑者は1650人(男1554人、女96人)で、全体の約5%を占める。

同年に刑事施設を出所した受刑者は1万5069人で、うち5480人が満期出所だった。一方、無期懲役の受刑者で出所(仮釈放)を許されたのはわずか1人だった。

画像タイトル

提供元

プロフィール画像

弁護士ドットコム

「専門家を、もっと身近に」を掲げる弁護士ドットコムのニュースメディア。時事的な問題の報道のほか、男女トラブル、離婚、仕事、暮らしのトラブルについてわかりやすい弁護士による解説を掲載しています。