無期懲役1600人で仮釈放は1人…2024年は過去最低か 「わずかな希望」もかすむ終身刑化が鮮明に

無期懲役1600人で仮釈放は1人…2024年は過去最低か 「わずかな希望」もかすむ終身刑化が鮮明に

●無期囚の仮釈放、1975年は112人もいた

約1600人いる無期懲役囚のうち、塀の外に出られたのが1人だけという状況は、どれほど異例なのか。

死刑に関する資料をまとめているNPO「CrimeInfo(クライムインフォ)」のサイトを参考に調べると、記録が残る1966年以降で、仮釈放された無期受刑者が「0〜1人」という年は確認できない。

1975年には112人の無期囚が仮釈放され、2001年までは毎年2ケタ台が続いていた。

しかし、2002年に8人に減少して以降、「1ケタの仮釈放」が珍しくなくなり、2ケタ台に乗ったのは、2003年、2005年、2013年、2015年、2017〜2020年の8年間だけだ。

近年は、2021年9人、2022年6人、2023年8人と推移。そして2024年は1人まで落ち込んだ。逆に、獄中死する無期囚は増加傾向にあり、2022年41人、2023年30人が服役中に死亡している。

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●仮釈放というわずかな希望「受刑生活を耐える糧になる」

無期刑の終身刑化──。その現実を最も強く感じているのは、本人たちだ。

筆者が手紙のやりとりをしている複数の無期受刑者は、自身の刑を「時間をかけて行われる死刑」「終身刑と同じ」「死刑よりきつい」と表現する。

今年導入された拘禁刑は、1907年(明治40年)の刑法制定以来となる大きな刑罰体系の転換といわれる。

背景には、犯罪を繰り返す「再犯者率」の高止まりなどを踏まえて、これまでの「懲らしめ」から「立ち直り」重視へ方向転換するという国の考えがある。

そうした国の方向とは矛盾した状況に置かれているのが、無期受刑者たちだ。

社会復帰を励みに受刑生活を送る人は多いが、事実上、その希望が実現する可能性は極めて低く、刑務官たちも接し方や指導方法に苦慮しているという。

ある無期囚の男性は、筆者にこんな手紙を送ってきた。

「わずかな希望がこれからの長い受刑生活を耐えていく糧の一つになります」

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