監修医師：
渡邊 雄介（医師）
所属
国際医療福祉大学教授
山王メディカルセンター副院長
東京ボイスセンターセンター長
滲出性中耳炎の概要
滲出性中耳炎は、耳の奥にある中耳という部分に液体がたまることで、耳が詰まった感じや聞こえにくくなる病気です。中耳は鼓膜の奥に位置し、空気の通り道である耳管（じかん）が中耳とのどをつないでいます。通常、この耳管を通じて中耳にたまった液体は排出されますが、耳管がうまく機能しないと液体が中耳にとどまり、滲出性中耳炎が発生します。
滲出性中耳炎は、どの年齢でも起こりますが、特に子どもに多く見られます。子どもの場合、両耳に発生することが多い傾向です。また、この病気を長期間放置すると、耳の中で炎症が慢性化し、癒着性中耳炎や真珠腫性中耳炎といった重篤な病態になることがあります。
滲出性中耳炎の原因
滲出性中耳炎の主な原因は、耳管の機能障害や鼻やのどの炎症です。以下に具体的な原因を説明します。
急性中耳炎の不完全治癒
急性中耳炎（耳が急に痛くなる病気）の治療が不十分だと、中耳の炎症が残り、液体（滲出液）がたまって滲出性中耳炎に移行することがあります。特に0～2歳の子どもは、急性中耳炎の後に滲出性中耳炎になりやすいです。
鼻やのどの病気
鼻炎（鼻の粘膜の炎症）や副鼻腔炎（鼻の奥にある空洞の炎症）、咽頭炎（のどの炎症）などの病気があると、耳管の周りに炎症が及び、耳管の働きが低下します。これにより滲出性中耳炎が発生しやすくなります。子どもに多いアデノイド肥大（鼻の奥にあるリンパ組織が大きくなること）も耳管を塞ぐ原因となります。
発育途上の耳管
7～8歳くらいまでの子どもの耳管は発育途中であり、耳管が正常に機能しないため滲出性中耳炎になりやすいです。また、口蓋裂（こうがいれつ：上顎の裂け目）やダウン症の子どもは、生まれつき耳管の機能が低下しているため、この病気になりやすく、治りにくい傾向があります。
