
連続テレビ小説「ばけばけ」(毎週月~土曜朝8:00-8:15ほか、NHK総合ほか※土曜は月~金曜の振り返り)の脚本を担当しているふじきみつ彦氏からコメントが到着。コントの台本も手がけるふじき氏ならではの発想から生まれたエピソードのビハインドや今後の展開への想いなどが語られた。
■怪談を愛する夫婦の何気ない日常を描く
本作は、主人公・松野トキ(高石あかり)が夫・ヘブン(トミー・バストウ)と共に、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治の日本で、“怪談”を愛しながら何気ない日常を過ごしていく物語。文学者・小泉八雲と妻の小泉セツをモデルにしつつも、登場人物や団体名などは一部改称し、大胆に再構成してフィクションとして描いていく。
■朝ドラ初執筆
ふじき氏は、ドラマ、映画、演劇、コント…と多ジャンルで活躍する脚本家。脚本を担当したドラマ「阿佐ヶ谷姉妹ののほほんふたり暮らし」(2021年、NHK総合)は、「第30回橋田賞」を受賞。また「みいつけた」(毎週月~金曜朝7:30-7:45、NHK Eテレ)の「コッシーとスイ」の脚本を初回から担当。立ち上げメンバーの1人として、キャラクター作りや番組内の歌の作詞もしている。朝ドラの脚本執筆は、今回が初となる。
■キャッチコピーの意味
――“朝ドラ”の執筆はいかがですか?
朝ドラは15分×125回あります。私が今まで書いた最長の脚本が、同じ15分で全32回の夜ドラでした。その時も「長いな」と思ったぐらい、これまでよくあるサイズの連続ドラマを書いたことがなかったんです。連続ドラマに対する向き不向きもわからないぐらいなのに、朝ドラの長さは経験したことがないことのさらにさらに上をいくものでした。最初にお話しをいただいたときは、「これは大変だな」と思いましたが、引き受けたからには頑張ろうと思っています。
実際に書き始めてからは、書くことの長さは実はそんなに感じていません。先を見通してものを書くタイプではないので、スタッフのみなさんと1週1週の内容について打ち合わせを重ねて書く、ということを繰り返しています。
――「この世はうらめしい、けど、すばらしい。」というコピーは、どのようにして生まれたのか教えてください。
もともとはキャッチコピーとして考えたわけではなかったんです。制作統括の橋爪(國臣)さんが「ばけばけ」の企画書を提出する時に、そこに「ばけばけ」とはどんな話かというのを1枚くださいと言われて、書いた内容の大見出しがこの言葉でした。まだドラマの大きな筋も決まっていなかったので、小泉八雲の怪談に引っ張られて「うらめしい」というワードが出てきて、あまり考え込まず、すんなりと書いた覚えがあります。
トキやヘブンの生き方は、貧しかったり、両親と疎遠だったり、うらめしいことが続いたという共通点があります。そんな二人が出会って、“うらめしい”から“すばらしい”に化けていく。そんな「ばけばけ」の精神が一言で表せたら良いなと思って、書いたのがあの文章でした。
トキとヘブンに限らず、この物語に出てくる人はみんなうらめしいことがあります。それでも、笑顔を忘れないというか、どこかで「この世はすばらしい」ととらえて生きている登場人物たちであってほしいという願いも込めて書きました。
■ぜひぜひ、みんなにスキップしてもらおうと
――第8週(11月17日~21日)は、どのような回でしょうか?
松江に取材で行った時に、八雲が薬局でビールを買っていたという話を聞いたので、それをぜひ使いたいなと思っていました。女中であるトキがビールを買うよう頼まれたとしたら、当然ビールのことは知らないからどういう風に買うのだろうと考えた結果、このようなビア探しのエピソードになりました。僕にとっては王道の回です。
第8週は、登場人物がみんなでスキップを練習するエピソードもあります。史実に八雲がスキップをしていたという話は全くないので、これは僕の想像です。一緒に身体を動かして楽しむことで、トキとヘブンの仲が縮まっていくとさらに良いなと思いました。
“ビア”は言葉遊びみたいなところがあったので、他に西洋のもので身体を動かしたくて、「この時代の日本の人はスキップはやっていなかったのでは」とふと思いつきました。着物でやるのは大変かなとも思いましたが、一回書いてみたうえで演出の皆さんに委ねようと、先に書いてしまいました。そうしたら「(着物でも)できます」という話になったので、ぜひぜひ、みんなにスキップしてもらおうと。スキップは難しくてなかなかコツがつかめない、でもつかめたら一生できるという面白さがある動きです。それを大の大人たち、すてきな役者さんたちがすることで、面白いシーンになっていると思います。

――今後の見どころと視聴者の皆さんへのメッセージをお願いします。
これから、トキとヘブンが一緒になるまでをじっくり書いています。トキにとっては、まったく初めて見る異国の人。価値観の違いよりももっと手前の、本当に何も知らないところからの始まりでした。ヘブンも全然知らない土地である日本に初めて来て、怖かったと思います。そんなふたりが、全然自分とは違うことをどう受け入れていくか。ヘブンのモデルの八雲も「オープンマインド」と言っていますが、心を開いて、なんとか分かろうとして、お互いに歩み寄っていきます。
今後も、「ばけばけ」というタイトル通り、いろんなことが“化けて”いきます。うらめしいことだったり、悲しいことだったり、それがちょっとずつすばらしいものに変わっていくのを、見ていただけたらうれしいです。
そして、何も起こらない週が来た時に、「あ、何も起こらないのに面白いな」と思ってもらえたら、それが一番うれしいです。
※高石あかりの「高」は、「はしご高」


