名誉毀損の容疑で逮捕された、「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏の弁護人が、自身のYouTubeチャンネルで、罪を認める方針をとることを公表しました。
報道によると、立花氏は、1月に死去した竹内英明元県議に関する虚偽の情報をSNSに投稿したなどとして名誉毀損の疑いで逮捕されていました。
その後、立花氏の弁護人となった石丸幸人弁護士が、自身のYouTubeチャンネルで11月14日、以下の方針を明らかにしました。
・真実相当性(※)は争わない方針
・罪を認めて謝罪すべきところは謝罪する.
・示談も進めていく
(※)真実相当性:発言内容が真実であると信じるに足りる理由があること。名誉毀損罪の成立を阻む要件の一つ。
一方で、竹内氏の遺族側が、示談の申し入れを拒否したとの報道もあります。こうした状況の中で、罪を認める方針で進めることの意味について検討してみます。
●弁護人が罪を認める方針をとる目的は?
示談交渉が拒否されたからといって、この方針が間違っているとか崩れたとかいうことにはなりません。
逮捕・勾留という身柄拘束を受けている場合、最優先の目標は勾留からの解放と不起訴です。
名誉毀損罪は親告罪(※被害者の告訴が必要な犯罪)であり、告訴が取り下げられれば、検察官は起訴することができません(刑法232条1項)。したがって、示談を目指すのはごく自然なことです。
しかし、今回のケースでは、遺族の処罰感情は強いことが当初から想定され、実際に亡くなった元県議のご遺族からすでに示談を拒否されたという報道もあります。
このように、示談成立により告訴が取り下げられる可能性が低い状況でも、罪を認めて謝罪するという方針を貫くことには以下のような意味があると考えられます。
まず、不起訴の可能性を高める要素として、立花氏の反省の態度が重要になってきます。罪を認め、かつ、反省を示して示談交渉を行っていること自体が、検察官の不起訴の判断にプラスの影響を与える可能性があります。
●示談が拒否されても「供託」という手段が考えられる
また、示談交渉が拒否された場合、被害者(本件の場合はご遺族)に対して供託をすることが考えられます。
「供託」とは、お金の受け取りを拒否している被害者などのために、そのお金を供託所(※法務局など)に預ける制度です(民法494条)。被害者がこのお金を受け取ろうと思えば供託金を受け取れる仕組みになっています。
これによって、示談が成立しない場合でも、ある程度は被害回復に向けた努力や真摯な反省の姿勢を検察官や裁判所に示すことができます。
弁護人としては、示談金を供託することや謝罪を続けることで、被害回復への努力や反省の態度があるという情状を積み上げ、最終的に不起訴処分(起訴猶予)や、起訴されたとしても罰金刑や再度の執行猶予を目指すということが考えられます。

